ABSTRACT 1341(P5-3)
大腸癌細胞におけるPCR法を利用したサブトラクション法による変異Ki-rasにより発現制御される遺伝子の同定:白澤 専二,奥村 幸司,笹月 健彦(九大・生医研・遺伝)
Identification of differentially expressed genes through activated Ki-ras in human colon cancer cells by PCR-based subtraction method : Senji SHIRASAWA, Koji OKUMURA, Takehiko SASAZUKI (Dept. of Genet., Med. Inst. Bioreg., Kyushu Univ.)
[目的]ヒト大腸癌の約半数にKi-ras遺伝子の変異は検出されるが、大腸癌細胞における活性化Ki-rasのシグナル伝達および発現制御される遺伝子に関しては、未知の部分が多い。Gly13Aspの変異Ki-rasを持つ大腸癌細胞株HCT116とその変異Ki-rasを遺伝子標的法を用いて欠失させたクローンHKe3を利用することにより、活性化Ki-rasにより発現制御される遺伝子の同定を行うことを目的とした。
[方法]HCT116とHKe3においてPCR法を用いたSubtraction Libraryを1)対数増殖期、2)血清非存在下、および3)TPA刺激後、の3種類の条件下で作製し、subtracted probeを用いたスクリーニングを行い、Northern法による発現の解析及び塩基配列の決定を行った。
[結論]これまでに3)の条件下におけるスクリーニングを行い、塩基配列を決定した結果、未知の遺伝子が多数存在し、さらにそれらをプローブとしてNorthern法を行った結果、一次スクリーニングにより得られたクローンのほとんどが、明らかに発現に差のある遺伝子であることが判明した。この結果より、PCR法を用いたサブトラクション法は有効であることが示唆されたので、1)、2)の条件下において解析を進めることにより、Ki-rasにより発現制御される発癌に関与する新しい遺伝子を同定することが可能であると考えられた。