ABSTRACT 1354(P5-4)
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アダプター蛋白質ShcのNGF依存的チロシンリン酸化におけるc-SrcとPI 3-キナーゼの関与:佐藤賢一、深見泰夫(神戸大・遺伝子)

Involvement of c-Src and PI 3-kinase in NGF-dependent tyrosine phosphorylation of Shc in PC12 cells: Ken-ichi SATO and Yasuo FUKAMI (Lab. of Mol. Biol., Kobe Univ.)

私達は昨年、以下の3点:(1)c-SrcによるShcのin vitroチロシンリン酸化がphosphatidylinositol 4,5-bisphosphate(PIP2)により亢進する、(2)この現象にはPIP2のShc PTBドメインとの結合が関与する、(3)PIP2依存的リン酸化は主にTyr239/240に起こる(神戸大・林 文夫 博士、東京大・渋谷 正史、後藤 典子、両博士との共同研究)、について報告した。今回私達は、PI 3,4,5-trisphosphate(PIP3)にもShc PTBドメインとの結合を介して、c-SrcによるShcリン酸化を亢進させる性質があることを見いだした。一方、PIP2/PIP3と同様にShc PTBドメインとの結合能を持つリン酸化チロシン含有ペプチドにはそのような性質はなく、むしろPIP2/PIP3依存性リン酸化反応を抑制した(愛媛大・渡辺 裕 博士との共同研究)。さらに私達は、ラット褐色細胞腫PC12におけるShcのNGF依存的チロシンリン酸化について解析した。PC12細胞のTriton X-100可溶性分画と非可溶性分画の両方で、Shcのチロシンリン酸化がNGF添加後2分以内に上昇した。その中で、非可溶性分画でのShcリン酸化がPI 3-キナーゼ阻害剤のwortmanninとLY294002により約半分に阻害された。NGF受容体/キナーゼはNGF添加前後を通じて可溶性分画に存在するが、c-SrcはNGF添加後2分以内に非可溶性分画に移行すること、また、c-Src阻害剤のgenisteinやPP1が非可溶性分画のShcリン酸化を顕著に抑制することも明らかとなった。以上の結果は、PC12細胞の細胞骨格領域におけるNGF依存的Shcリン酸化反応に、c-SrcとPI 3-キナーゼの活性及びその反応産物PIP3が共役して働いている可能性を示している。