ABSTRACT 1355(P5-4)
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ラット肝発癌過程における受容体型チロシンキナーゼ発現の特異性と局在の検討:黒田宏昭1, 大津留晶2, 二口充3, 難波裕幸2, 白井智之3, 兼松隆之11長崎大・医・二外, 2長崎大・原研・分子医療, 3名市大・医・一病理)

Expression of receptor-type tyrosine kinase gene family during rat hepatocarcinogenesis: Hiroaki KURODA1, Akira OHTSURU2, Mitsuru FUTAKUCHI3, Hiroyuki NAMBA2, Tomoyuki SHIRAI3, Takashi KANEMATSU1 (1Dept. of Surg. II, 2Dept. of Nature Med., Nagasaki Univ. Med. Sch., 31st Dept. Pathol., Nagoya City Univ. Med. Sch.)

【目的】受容体型チロシンキナーゼ(RTK)遺伝子の発現様式は癌化の過程で変化していくと考えられる。多数のRTKがクローニングされたが、肝発癌において特異性のあるRTKの検討はない。そこで、ラット化学肝発癌モデルを用い、GST-Pを前癌病変のマーカーとし、肝癌と前癌病変、正常肝における多様なRTK遺伝子の分布の差を調べ、その発現量、局在を検討した。【対象・方法】F344ラットにDEN経口投与で作製した肝癌の癌部と正常肝よりRNAを抽出した。RTK遺伝子のキナーゼドメインよりdegenerated primerを作製、RT-PCRを行いサブクローニングした。計459クローンのシークエンスを行い、ジーンバンクよりホモロジー検索を行った。得られたRTKの発現を、RT-PCR、ノーザンブロッティングで検討した。更にGST-P染色にて前癌病変を同定し、受容体の局在を発癌過程の各ステージで免疫染色、in situ hybridization (ISH)にて比較した。【結果】ホモロジー検索にて正常肝及び肝癌より23種類のRTK遺伝子の発現を認めた。そのうちc-Met (HGF受容体)と血管内皮特異的受容体と考えられているTie-2、Flk-1(VEGF受容体)などが肝癌において優位であった。免疫染色、ISHにて、Flk-1、c-Metは前癌病変より発現が増加していた。またTie-2は肝細胞の幹細胞である可能性が議論されているoval cellに強く発現していた。【結語】肝癌発生の早期から特異的なRTK遺伝子発現変化が証明され、多段階発癌において増殖因子のオートクライン、パラクライン機構の重要性が示唆された。