ABSTRACT 1361(P5-4)
ショウジョウバエ癌抑制遺伝子 lats のヒトホモログのクローニング
藤元次郎、山本雅(東大・医科研・制癌)
Cloning of the human homolog of Drosophila tumor suppressor gene lats : Jiro FUJIMOTO, Tadashi YAMAMOTO (Dep. Oncology, Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)
lats (large tumor suppressor) 遺伝子はショウジョウバエにおいて細胞の異常増殖をもたらす劣性遺伝子として同定されたものであり、その表現型からヒトの癌抑制遺伝子に相当するものであると考えられている。 cDNA クローニングにより lats は新しいセリン・スレオニンキナーゼをコードすることが明らかになっているが、その遺伝子産物の生理機能は不明である。私たちは新規プロテインキナーゼ遺伝子を同定する目的で、キナーゼドメインに保存されたアミノ酸配列を基にした degenerate primers を用いた RT-PCR を行った。得られた cDNA のうちの一種は新規なものであったが、これは lats に極めて高い類似性を持つことからヒトにおける相同遺伝子であると考えられた。 ヒト lats はショウジョウバエ lats とキナーゼドメインにおいてアミノ酸配列の約 70% が一致したが、既知のキナーゼとは類似性が低く(PKA と 40% 程度)、新しいキナーゼのサブファミリーを形成すると思われる。
現在染色体マッピング、癌組織における突然変異の検索等により、ヒトにおける癌抑制遺伝子である可能性について検討を加えているので報告したい。