ABSTRACT 1365(P5-4)
MAP kinase phosphatase遺伝子5'上流域の解析と癌性変異との関連:富樫卓志,中村恒史,島礼,菊池九二三(北大・免疫研・生化学)
Analysis of the 5'-flanking region of rat MAP kinase phosphatase gene and its fuction in hepatocarcinogenesis : Takushi TOGASHI,Koji NAKAMURA,Hiroshi SHIMA,Kunimi KIKUCHI (Sect. Biochem., Inst. Immunol. Sci., Hokkaido Univ.)
【目的】細胞内シグナル伝達機構の一つとしてタンパク質の可逆的リン酸化があり、細胞の増殖、分化、ストレス応答などに重要な役割を担っている。MAP kinase phosphatase (以下MKP) は MAP kinase のスレオニンとチロシン両残基を脱リン酸化してMAP kinaseカスケードを調節するdual specificity protein phosphataseとして同定された。われわれは昨年の本学会においてMKP familyのうちMKP-2が正常肝ではその発現が認められないものの、原発肝癌および移植性腹水肝癌で顕著に高発現し、その発現上昇と悪性度との間に相関のあることを報告した。今回、このMKP-2の遺伝子発現における癌性変異の機序を検討した。
【結果と考察】正常肝細胞と肝癌細胞におけるMKP-2のmRNA安定性をノーザンブロットにより検討した結果それらの間に変化は認められなかった。ついで肝癌細胞でのMKP-2のプロモーター領域の活性化を検討した。そこでラット肝ゲノムライブラリーをスクリーニングし、MKP-2の5'上流域をふくむ約12 kbpのクローンを得た。cDNAの5'上流約2 kbpの塩基配列を決定した。この領域にはTATAボックスが存在した。現在、この2 kbpの領域をさらに断片化し、ルシフェラーゼをレポーター遺伝子としてそれぞれの断片のプロモーター活性を正常肝細胞、移植性腹水肝癌細胞、線維芽細胞NIH3T3において比較検討している。