ABSTRACT 1366(P5-4)
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1型プロテインホスファターゼの核内阻害タンパク (NIPP-1) のcDNAクローニングと肝癌における癌性変異:金世殷,中村恒史,島礼,菊池九二三(北大・免疫研・生化学)

cDNA cloning of nuclear inhibitor of protein phosphatase-1 (NIPP-1) and its gene expressions in hepatocarcinogenesis and rat ascites hepatoma cells: Sei-Eun KIM,Koji NAKAMURA,Hiroshi SHIMA,Kunimi KIKUCHI (Sect. Biochem., Inst. Immunol. Sci., Hokkaido Univ.)

 これまでにわれわれは、原発性肝癌、移植性腹水肝癌、肝再生過程において1型プロテインホスファターゼ(PP1)mRNAの発現上昇および核内 PP1 活性の上昇をみいだした。本研究は、PP1の核内制御サブユニットであるnuclear inhibitor of protein phosphatase-1 (NIPP-1) の原発性肝癌、移植性腹水肝癌におけるPP1活性の調節機構および制御の解明を目的としている。ラット原発性肝癌および移植性腹水肝癌におけるNIPP-1自体の発現を検討するためのプローブとしてラットNIPP-1 cDNAの単離を試みた。現在までウシNIPP-1 cDNAの塩基配列が報告されているが、その配列をもとに白血病細胞株HL-60よりRT-PCRによりヒトNIPP-1 cDNAを単離した。ついで、これをプローブとしてラット肝cDNAライブラリーをスクリーニングし、その全長cDNAを得た。すでに報告のあるウシNIPP-1と今回得られたヒトおよびラットのアミノ酸配列を比較した結果、それぞれ 99.1% および 97.3% の相同性を示した。得られたラットNIPP-1 cDNAをプローブとして、ノーザンブロットにより移植性腹水肝癌および原発性肝癌における発現を検討した結果、正常肝に比べ、種々の移植性腹水肝癌細胞株においてその発現が悪性度に比例して上昇し、DAB誘発原発性肝癌組織およびその周辺組織においてもその発現が顕著に増加していた。ところが、肝再生過程の前後でNIPP-1の発現の変化は認められなかった。現在、 これらの結果と肝癌におけるPP1の触媒サブユニットの発現上昇との関連を検討している。