ABSTRACT 1374(P5-5)
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造血器腫瘍細胞の細胞遺伝学的ならびに分子生物学的研究(77報) 健常小児末梢リンパ球におけるTEL-AML1融合遺伝子の検出:石前峰斉,江口真理子,鎌田七男 (広島大原医研・分子細胞遺伝)

Detection of TEL-AML1 fusion transcript in peripheral lymphocytes of normal children:Minenori ISHIMAE, Mariko EGUCHI, Nanao KAMADA (Dept. of Cancer Cytogenetics, Research Inst. Radiation Biology and Medicine, Hiroshima University)

[目的]近年、白血病・悪性リンパ腫の発症に関与する転座融合遺伝子BCR-ABL、IGH-BCL2等が健常人にも存在することを示唆する報告がなされている。12;21転座は小児急性リンパ性白血病(ALL)に高頻度に認められ、転座により形成されるTEL-AML1融合遺伝子が白血病の発症に重要であると考えられている。我々は12;21転座型ALLの病態を解明するため白血病の既往のない小児の末梢血中のTEL-AML1融合遺伝子の有無を検討した。
[方法]白血病、悪性リンパ腫の既往のない小児(15才以下)57例、および成人(16才以上)19例の計76例を対象とした。また臍帯血45例についても検討した。末梢血単核球層よりtotal RNAを抽出、MMLV-RTにてcDNAを合成しRT-PCRを行った。TEL遺伝子exon 5にsense primerを、 AML1遺伝子exon 4にantisense primerを設定し、nestedPCRを行いTEL-AML1融合遺伝子の有無を検討した。 RT- PCR陽性例についてはシークエンス解析を行い塩基配列を確認した。[結果]小児57例中6例(10.5%、11ケ月-15才)でnested RT-PCRにてTEL-AML1融合遺伝子を検出した。また臍帯血45検体中1例(2.2%)に融合遺伝子を認めた。陽性例全例でシークエンス解析によりTEL exon 5とAML1exon 2-4の融合を確認した。16才以上の成人末梢血ではTEL-AML1融合遺伝子は検出されなかった。[考察]我々は新たに白血病の既往を持たない小児の末梢血中にTEL- AML1融合遺伝子を有するリンパ球が存在することを明らかにした。12;21転座は小児期(1-15才)ALLに特異的に認められる異常であり、TEL-AML1融合遺伝子陽性例が実際の12;21転座型ALLの好発年齢とほぼ重なることから、末梢血中にごく少数存在するTEL-AML1融合遺伝子陽性リンパ球が何らかの理由で活性化されることが白血病発症につながるのではないかと考えられる。