ABSTRACT 1384(P5-5)
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t(10;11)より単離されたABI-1遺伝子の悪性腫瘍および正常組織における発現: 渋谷紀子,滝智彦,別所文雄,林泰秀(東京大学医学部小児科)

Expression of ABI-1 gene cloned from t(10;11) in childhood malignancies and normal tissues : Noriko SHIBUYA, Tomohiko TAKI, Fumio BESSHO, Yasuhide HAYASHI (Dept. of Pediatr., Faculty of Med., University of Tokyo)

【はじめに】MLL遺伝子は多くの転座相手遺伝子が報告されているが、最近我々は10,11転座をもつAML患者検体より、MLLの新規転座相手遺伝子としてABI-1遺伝子を同定した。ABI-1のマウスホモログであるAbi-1(Abl-interactor 1)はAblと結合する蛋白として単離され、Abi-1の過剰発現はv-Ablの形質転換活性を抑制することが知られている。ABI-1蛋白はまた受容体型チロシンキナーゼの基質であるeps8と結合するe3B1蛋白としても単離され、細胞増殖の制御に関与するとされている。今回我々はABI-1の機能を更に明らかにするため種々の組織におけるABI-1の発現を検討した。【対象と方法】白血病細胞株43、神経芽腫の新鮮腫瘍30、細胞株18、横紋筋肉腫細胞株7、ユーイング肉腫細胞株7、正常成人より得たB細胞株4、新鮮血リンパ球検体13よりRNAを抽出した。ABI-1のホメオボックス相同領域をはさんだプライマーを設定してRT-PCR法によりABI-1の発現を検討した。必要に応じてPCR産物のシークエンス解析を行った。【結果】ABI-1のPCR産物として488bp、401bp、224bpの3つのバンドが認められ、シークエンス解析より、スプライシングの違いによるものと考えられた。組織によりその発現パターンが異なり、白血病細胞株は主として401bpと224bpの2本のバンドを発現し、これは正常リンパ球での発現と同様であったが、固形腫瘍由来の細胞株では488bpと401bpのバンドがみられた。一方、神経芽腫の新鮮腫瘍では401bpのバンドを優位に発現しており、細胞株における発現パターンとは異なっていた。【まとめ】ABI-1は腫瘍および細胞株の種類により発現のパターンが異なり、細胞増殖制御に関与していることが示唆された。