ABSTRACT 1391(P5-5)
AP-PCR法で同定された胃がんの増幅遺伝子の解析:大浪澄子、吉田輝彦、松本伸行、中野雅、佐々木博己、寺田雅昭(国立がんセ・研・分子腫瘍)
Cloning of an amplified DNA fragment in gastric cancer : Sumiko OHNAMI, Teruhiko YOSHIDA, Nobuyuki MATSUMOTO, Masaru Nakano, Hiroki Sasaki and Masaaki TERADA (Genetics Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)
AP-PCRは1本のプライマーを用いたPCRにより、ゲノムのfinger printingを行う方法である。昨年我々はAP-PCRを74例の胃がん患者由来のがん部および非がん部DNAに対して行い、検出される遺伝子断片の増幅や欠失の頻度が予後と相関することを報告した。今回、比較的高頻度にAP-PCRで増幅が認められた遺伝子断片をクローニングしたので報告する。胃がん74例中18例のがん部由来のDNAにAP-PCR法で同一の部位(C0部位)に増幅したバンドを認め、クローン化後903bpのゲノム断片を得た。これをプローブとしてサザンブロット解析を行った結果、AP-PCRで増幅していた8例中6例に非がん部と比較して1.7〜5.5倍の増幅を認めた。一方、C0部位にAP-PCRのシグナル増幅の認められなかった4例では増幅を認めなかった。RT-PCR及びRNAブロット解析により、このゲノム断片にはエクソンが含まれていることがわかった。cDNAの全長をクローニング中であるが、既知遺伝子との相同性は現在の所見いだされていない。この遺伝子はradiation hybrid法により5p12領域にマップされた。このように胃がんのAP-PCR解析は、予後と相関するゲノムの遺伝子不安定性の簡便な把握に加えて、未知のがん関連遺伝子の同定にも有用であることが示された。