ABSTRACT 1394(P5-6)
 ポスターセッション一覧 トップ 


口腔扁平上皮癌におけるp27Kip1の発現およびプロテアソーム阻害剤投与によるアポトーシスの誘導:工藤保誠、高田隆、佐藤淳(広島大・歯・口腔病理)

Expression of p27Kip1 and induction of apoptosis by treatment of proteasome inhibitor in oral squamous cell carcinomas : Yasusei KUDO, Takashi TAKATA, Sunao SATO (Dept. of Oral Pathol. Hiroshima Univ. Sch. of Dent.)

p27Kip1は、cyclin dependent kinase 阻害蛋白で、種々の癌においてその発現低下が悪性度と相関することが報告されている。そこで我々は口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるp27Kip1の発現を免疫組織化学的に検索し、臨床病理学的に解析した。すべての正常口腔粘膜20例および上皮異形成症22例の75%においてp27Kip1の高発現がみられたのに対し、OSCC 81例の89%にその発現低下や消失を認め、その程度は病期の進行、転移、予後と有意に相関していた。さらにOSCC細胞6株 におけるp27Kip1mRNA、タンパクの発現を検討したところ、mRNAの発現低下が認められないにもかかわらず、ほとんどの細胞でタンパクの発現の低下がみられた。そこで、プロテアソーム阻害剤であるLLnVをp27Kip1タンパクの高発現および発現のない細胞に投与したところ、後者でのみ同タンパクの発現の誘導がみられ、プロテアソームによる分解が同タンパクの発現低下に関与していると考えられた。また、発現のない細胞でLLnV投与によりアポトーシスの誘導を認めたので、種々の細胞周期調節因子およびアポトーシス関連タンパクの発現を検討したところ、p27Kip1の発現増加とともにcyclin D、ppRbの発現低下、CPP32の活性化、Bcl-2の発現低下がみられた。以上より、p27Kip1発現の低下・消失はOSCC の発生と進展に関与し、予後判定因子として有用とみなされた。また、OSCCにおけるp27Kip1タンパクの発現低下には、プロテアソームによる分解が関与すると考えられ、プロテアソームによる分解を阻害することによりアポトーシスが誘導される可能性が示唆された。