ABSTRACT 1396(P5-6)
ヒト胃癌におけるInterferon Regulatory Factor-1 (IRF-1) の発現:P53およびP21/WAF1との関連:尾崎充彦,五藤 章,大雲剛志,清成 寛,土井理恵子,井藤久雄 (鳥取大・医・一病理)
Expression of Interferon Regulatory Factor-1 (IRF-1) in human gastric: Its relationship to P53 and P21/WAF1:Mitsuhiko OSAKI, Akira GOTO, Tsuyoshi OHKUMO, Hiroshi KIYONARI, Rieko DOI, Hisao ITO (First Dept.Pathol.,Facul.of Med., Tottori Univ.)
【目的】ヒト胃癌組織標本および胃癌細胞株を用い,IRF-1の発現とP53,P21/WAF1発現との関連を解析した.
【材料と方法】胃癌(高分化腺癌)26例のホルマリン固定パラフィン包埋材料を用い,正常粘膜,腸上皮化生,胃癌におけるIRF-1の発現とP53およびP21/WAF1発現との関連を免疫組織化学的に検討した.ヒト胃癌細胞株6株(MKN-1, MKN-28, MKN-45, MKN-74, TMK-1, KATO-III)を用いWestern blot法にてIRF-1の発現をみた.さらにMKN-74にInterferon-γ(IFN-γ)処理し,IRF-1の誘導とP53およびP21/WAF1の発現の関連について検討した.
【結果】IRF-1陽性細胞は正常粘膜,腸上皮化生腺管,癌部の順に陽性症例数が増加した.しかしながら,その染色性は腸上皮化生で最も強く見られ,癌部におけるIRF-1の発現は非腫瘍部に比較し減少していた.P53免疫染色陽性症例においてIRF-1とP21/WAF1の発現の関連性がみられたが,P53の発現とは相関しなかった.一方,細胞株では全てにIRF-1が発現していた.IFN-γ処理によりMKN-74 (野生型p53)においてIRF-1の発現が亢進した.同時にP21/WAF1発現が誘導され,両者の関連性が示唆された.一方,P53の発現に変化はなくIRF-1によりP53非依存的にP21WAF1が発現されることが示唆された.
【まとめ】IRF-1は胃の腸上皮化生および発癌に関与していることが示唆された.胃癌細胞株においてIRF-1がP53とは独立してP21/WAF1を誘導していることからP53非依存性の細胞周期制御にIRF-1が関与している可能性が考えられた.