ABSTRACT 1397(P5-6)
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膵癌における p21 蛋白の発現ーp53 蛋白と対比して:大坪公士郎 1、胡 育新 1、山口泰志 1、渡辺弘之 1、阿依古麗 1、元雄良治 1、澤武紀雄 1 ( 1 金沢大がん研・内 )

The expression of p21 protein in pancreatic cancer compared with that of p53 protein:Koushirou OHTSUBO 1, Yu-Xin HU 1, Yasushi YAMAGUCHI 1, Hiroyuki WATANABE 1, Aiguli HA 1, Yoshiharu MOTOO 1, Norio SAWABU 1 ( 1 Dept. of Int. Med. and Med. Oncol., Cancer Rs. Inst., Kanazawa Univ.)

〔目的〕p21は p53 と密接に関連して発現する癌抑制遺伝子であると想定されている。しかし、 膵癌における p21 の発現や p53 との関係についてはほとんど検討されていない。我々は、膵癌において p21 と p53 の両蛋白の免疫組織学的な検討を行い、両者の発現の相互関係および各種臨床病理学的事項との関係を比較した。〔対象と方法〕対象として、手術および剖検により得られた正常膵6例、良性膵疾患26例、膵癌58例の計90例を用い、p21には187抗体 (Santa Cruz)、p53にはDO-7 (DAKO)の抗血清でSAB法にて染色を行った。〔結果〕正常膵6例,及び良性膵疾患26例のうち1例を除き、p21の細胞核に染色されるものは認めなかった。核に染色された細胞が癌組織の5%以上にみられた場合を陽性とすれば、p21は膵癌58例中12例 (20.7%)で陽性であり、主として高分化型の腺管形成を示す部分でよく発現していた。p53 染色では、核染色された細胞が20%以上みられた場合を過剰発現として陽性とすれば、58例の膵癌中37例 (63.8%)で陽性であった。両者の発現の相互関係をみるとp53 陰性群ではp21 陰性は21例中14例 (66.7%)であるのに対し,p53 陽性群では37例中32例 (86.5%)であり,後者で有意に高率であった。また、p21 陰性 p53 陽性すなわち両遺伝子とも異常を示す群では、高分化型よりも中・低分化型を示す場合が多い傾向にあった。〔結語〕今回の膵癌組織における検討より、p53 変異に伴って p21 の誘導が破綻するため、p21 発現が低下するという機序が推察された。