ABSTRACT 1400(P5-6)
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ヒト乳癌におけるp34cdc2とp53の発現に関する検討: 笠原正男、村上正基、堀ハルナ、小森克彦、溝口良順、黒田 誠(藤田学園・医・病理)

Expression of p34cdc2 and p53 in human breast cancer:Masao KASAHARA,Masamoto MURAKAMI,Haruna HORI,Kastuhiko KOMORI,Yoshikazu MIZOGUCHI,Makoto KURODA(Dept.of Pathology.Fujita-Health Univ.Sch. Med.)

【目的】cyclin/CDK複合体の活性を制御することにより周期を停止させることが可能である。cyclin/ CDKには蛋白CDK2,cdc2などが知られ、CDKインヒビター, cyclin/CDKの活性を阻害する低分子蛋白としてp21,p53がそのターゲットとして検討されている。p34cdc2はcyclinと複合体を形成し、セリン/スルオニキナーゼ活性により細胞周期におけるG1とS期,G2とM期との各境界で遷移を調節する重要な役割を担っている。正常p53はp34cdc2/cyclinA複合体の基質となりcyclinAプロモーター活性を抑制する。今回我々はp34cdc2に着眼し、ヒト乳癌におけるp34cdc2とp53との関連性および数種のパラメーターを用い臨床病理学的立場から検索し、予後に関する有意性について検討した。【材料と方法】摘出乳癌35例中任意に20例を選択し、通常の方法による病理組織学的診断を施行した。免疫染色方法はp34cdc2(1:10,日本ターナー)p53(1:20,Novocastra),Estrogen Reseptor(ER)(1:1,MBL),Progesteron reseptor(PR)(1:1,MBL)についてABC法を用いた。ホルモン測定はEIA法、臨床病理学検討は「乳癌取り扱い規約」に従って行った。【結果】p34cdc2とp53との関係はp34cdc2陽性p53陰性症例が45%で統計的には有意差は認められなかった。p34cdc2と組織型,Stageリンパ節転移,ホルモンレセプターなどとの関連性も明らかでなかった。【考察】p34cdc2とp53発現を免疫染色法より臨床病理学的立場から検討すると、p34cdc2はp53より早期に陽性化が証明された。このことは細胞周期上p53がG1停止と関係し、p34cdc2がG2期/M期への移行に必須であることによりp34cdc2キナーゼ活性がG2からM期にかけて急激に上昇し、G1期ではその活性がみられない現象からもヒト乳癌胞巣内癌細胞内にp34cdc2/cycliA複合体が正常p53と結合しG1-S期の細胞周期回転を促進させていることが推測される。そのため核内にp34cdc2の産生が増加してくることが示唆された。