ABSTRACT 1423(P5-8)
食道癌におけるp53癌抑制遺伝子変異の臨床的意義:梶山美明1,菅野 仁2,上野正紀1,堤 謙二1,木ノ下義宏1,宇田川晴司1,鶴丸昌彦3(1虎の門病院消化器外科,2冲中記念成人病研究所,3順天堂大第一外科)
Clinical significance of p53 tumor suppressor gene in patients with esophageal cancer:Yoshiaki KAJIYAMA1, HitoshiKANNO2, Masaki UENO1, Kenji TSUTSUMI1, Yoshihiro KINOSHITA1, Harushi UDAGAWA1, Masahiko TSURUMARU3 (1Dept. of Surg. Toranomon Hosp., 2Okinaka MemorialInst. for Med. Res., 31st Dept. of Surg., Juntendo Univ.)
【目的】従来のp53癌抑制遺伝子変異検出の多くは簡便な免疫組織染色法によるものであるが同法で陽性と判定されても真に変異があるか否かは不明である.本研究の目的は食道癌同一症例において,免疫組織染色,PCR-SSCP,ダイレクトシークエンスの各法で変異検出を行い,変異を塩基レベルで確定した上でその臨床的意義を明らかにすることである.【対象と方法】3領域リンパ節郭清を伴う食道扁平上皮癌手術31例からDNAを抽出しp53のexon5〜8についてPCR-SSCP法で変異を検出し陽性例についてダイレクトシークエンスを行った.また免疫組織染色を行い免疫染色,PCR-SSCP,ダイレクトシークエンス法の変異検出結果を比較した.さらに各法によるp53変異の情報が生物学的悪性度の危険因子となりうるかをロジスティック回帰分析により多変量解析した.【結果】(1) p53変異のpositive predictive valueは免疫染色法で35.0%,PCR-SSCP法で45.8%にとどまった.なお6例はこれまで未報告の新たな変異であった.(2)多変量解析の結果exon5の変異がリンパ節転移の,exon8の変異が壁内転移の有意な危険因子として選択されたが免疫染色法とPCR-SSCP法による変異の情報は有意な危険因子とはならなかった。【結語】p53のexon5とexon8の変異は食道癌の悪性度を反映し,臨床上重要な意義を持つ可能性が示唆された.