ABSTRACT 1425(P5-8)
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トロトラスト症胆管細胞癌における遺伝子変異:上川龍彦1,伊藤朋子1,日合 弘1,町並陸生2,石川雄一3,福本 学41京大・医・病態生物、2東大・医・病理、3癌研・病理、東北大・加齢研・病態構築4

Gene altetion in human cholangiocelllular crcinoma induced by thorotrast : Tatsuhko KAMIKAWA1, Tomoko ITOH1, Hiroshi HIAI1, Rkikuo MACHINAMI2, Yuichi ISHIKAWA3, Manabu FUKUMOTO4 (11st Dept. of Pathol. Med., Kyoto Univ., 2Dept. of Pathol. Med.,The Univ.Tokyo., 3Dept. of Pathol.,Cancer Inst., 4IDAC., Tohoku Univ.)

【目的】 血管造影剤として使用されたトロトラストは肝・脾・骨髄などに沈着し、その被爆によって胆管細胞癌の発症が有意に高くなることが知られている。低線量α線の持続的被曝に特異的な遺伝子の変異の有無を知るために、トロトラスト被投与患者(ト症)の胆管細胞癌のパラフィン包埋切片におけるras, p53遺伝子の変異を検索した。
【方法】 PCR法によって、rasは直接シークエンス法、p53はプラスミドへサブクローニングした後に塩基配列を決定した。
【結果と考察】 ras遺伝子の中で変異がみられたのはk-rasのみで、H-およびN-rasの変異は認めなかった。癌部におけるk-ras変異は2例のコドン12、1例のコドン13にG→A変異を、1例のコドン14にT→A変異を認めた。これらの非癌部には変異を認めていない。また、興味深いことに、1例では癌部ではなく非癌部のみにコドン12のG→A変異を認めた。p53のエクソン8の解析では、癌部2例と非癌部の2例に変異を認めたが、G→A変異は非癌部の1例のみにみられた。また、エクソン7の解析では、同一症例の組織型が異なる部位での癌部で、それぞれT→C変異、A→G変異を認め、他に癌部でT→C変異1例変異認めた。以上、p53では、特定の変異、ホットスポットは認められなかった。総合すると、rasとp53では、変異を起こす原因が異なることが示唆された。また、両遺伝子とも一部の症例の非癌部に変異が認められたことから、発癌初期にこれらの変異が起こっていることが示唆された。