ABSTRACT 1434(P5-8)
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放射線誘発マウス皮膚がんに見出されたp53とその疑似遺伝子の相同組み替え: 田ノ岡 宏, 大津山彰, 佐々木博己国立がんセ研・分子腫瘍, 産業医大・放射線衛生)

Homologous recombination between p53 and its pseudogene in radiation-induced mouse tumor: Hiroshi TANOOKA1, Akira OOTSUYAMA2, Hiroki SASAKI1 (1Genetics Div. Natl. Cancer Ctr. Res. Inst., 2Dept. Radiat. Health, Univ. Env. Occup. Med.)

ベータ線を週3回の頻度で ICR 雌マウスの背中に照射を続けると一回 0.5 Gy 以下の線量では全く発がんしない。閾値以上の線量では 100% 発がんする。この中で、一回 線量 2.5 Gy で発生した繊維肉腫にp53と疑似遺伝子 Yp53 との間に相同組み替えのおこっている例を発見した。
Tumor #5 は mRNA /cDNAでみると p53 exon 6 に 5 bp の欠失がある。一方、抽出した DNA ではΨp53 と p53 がexon 5 の 5'端で相同組み替えをおこし、上流部が Ψp53 で下流部が p53 であるキメラがあった。判別指標はΨp53に intron がないこと、特有のマーカーシクエンスがあること、p53 の方は intron の存在であった。サザンブロットによると、キメラは 全体のp53 の8%を占めていた。キメラの exon 6 部分には、 cDNA に存在した 5-bp の欠失はなかった。以上から、この腫瘍の起源となる細胞は、まず p53 変異によって組み替え活性が増大し、ヘテロの状態でLOHをおこす前に2ー3回分裂した。その後、反復照射によって生じるDNA二重鎖の組み替え修復の過程でp53 は Ψp53 との間に相同組み替えを生じ失活したものとみられる。