ABSTRACT 1446(P5-9)
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変異型p53リン酸化部位変異体の細胞増殖抑制構:杉川恵美子1,矢崎直子1,瀬川薫2,中西憲之1,大橋元明11田辺製薬・創薬研、2慶大・医・微生物)

The mechanism of growth suppressor function in p53 phosphorylation site mutants:Emiko SUGIKAWA1,Naoko YAZAKI1,Kaoru SEGAWA2,Noriyuki NAKANISHI1,Motoaki OHASHI1(1Discovery Research Laboratory,Tanabe Seiyaku Co.,Ltd.,2Dept.microbiol.,Keio Univ.Sch.Med.)

目的・前年度本大会において、変異型p53(Val143Ala,Arg175His,Arg248Trp)の各リン酸化部位を不活性化(Ser->Ala)した変異体を作成し、これらの機能を解析した。その結果cdc2キナーゼおよびDNA-PKのリン酸化部位を不活性化した変異型p53が、コロニー形成能を抑制した。そこで今回、これらリン酸化部位変異体の増殖抑制能がp53の転写活性化能に依存するか否かを検討した。方法・野生型p53およびp53リン酸化部位変異体について、それらの転写活性化に必須な部位(Ser22Gly23)に変異を導入した、転写活性化部位変異体を作製した。それらをリン酸カルシウム法を用いてp53欠損細胞Saos-2に一過性に発現させ、トランスフェクト後72時間目に細胞周期およびアポトーシスの解析を行った。転写活性化能の測定は、各種p53cDNAと、p53特異的に結合するBC配列をルシフェラーゼ遺伝子につないだものをSaos-2細胞にトランスフェクトし、48時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。コロニー増殖能の測定は、トランスフェクト後G-418存在下約3週間培養を続けた細胞をギムザ染色しコロニー数を計測して行った。結果と考察・p53リン酸化部位変異体は、野生型を特異的に認識する抗体PAb-1620の反応性を獲得しており、リン酸化阻害によるコンフォーメーション変化が、コロニー形成の抑制に寄与することが示唆された。しかしながら変異型p53のDNA-PKおよびcdc2キナーゼリン酸化部位変異体の、p53依存性転写活性化能は、変異型p53の2から5倍に過ぎなかった。これはリン酸化部位変異体が、転写活性非依存的に増殖を抑制する可能性を示唆した。そこで、p53リン酸化部位変異体の転写活性化部位に変異を導入したところ、もとのリン酸化部位変異体に比べて弱いものの、コロニー形成を抑制した。以上の結果よりp53リン酸化部位変異体によるコロニー形成の抑制は、転写活性依存的および非依存的な両方の経路によって起こると考えられた。