ABSTRACT 1447(P5-9)
組み換えアデノウイルスベクターを用いたp73 遺伝子導入によるアポトーシスの誘導:村松由起子、濱田洋文(癌研・癌化療セ・分子生物治療)
Apoptosis induction by adenovirus-mediated p73 overexpression:Yukiko MURAMATSU and Hirofumi HAMADA (Dpt . Mol. Biother. Res.,Cancer Chemother. Ctr, Jap. Fnd. Cancer Res.)
【目的】 癌抑制遺伝子 p53 のホモログとして発見された p73 遺伝子をアデノウイルスベクターにより悪性神経膠腫細胞へ導入して生物学的効果を調べると共に、癌遺伝子治療への応用を検討した。
【方法・結果】 p73 遺伝子の cDNA を組み込んだアデノウイルス AxCAhp73 を作成し(1.5×10^9 pfu/ml)、Western blotting により73 kDa のタンパク発現を確認した。AxCAhp73 をMOI 300 で感染させた悪性神経膠腫U251 細胞では、細胞増殖が 10 % にまで抑制され、hypoploidy を示す細胞が 69 % に上昇した。AxCAhp53-F/K20 で p53 遺伝子を導入した場合も同様の結果が得られたが、AxCAhp21 感染による p21 遺伝子の高発現では G2 arrest が顕著に起こり、hypoploidy を示す細胞は6.7 % とわずかであった。U373 細胞では U251 細胞とほぼ同様の結果であったが、p73 遺伝子導入によるアポトーシス誘導の程度に差が見られた。
【考察】 p73 遺伝子を高発現させることによりアポトーシスが誘導された。今後 p73 遺伝子によるアポトーシスの分子メカニズムを検討し p53 遺伝子によるものと比較する。また、細胞の違い(cell line や p53 遺伝子, p73 遺伝子異常の有無)とp73 遺伝子によって誘導されるアポトーシスに対する感受性の差などについて調べ、p73 遺伝子を発現するアデノウイルスベクターの癌遺伝子治療への応用を検討してゆきたい。