ABSTRACT 1462(P5-10)
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ヒト染色体9p21部位の新たな癌抑制遺伝子:p19ARF 上條岳彦1, 2、Charles J. Sherr21信州大・医・小児、2St. Jude Children's Research Hospital)

A New Tumor Suppressor Gene Coded at Chromosome 9p21 Region: p19ARF Takehiko KAMIJO1, 2、Charles J. SHERR21Dept of Pediatrics, Shishu University School of Medicine、2St. Jude Children's Research Hospital)

[目的]ヒト染色体9p21部位は多くの腫瘍で欠失が報告され、癌抑制遺伝子の存在が予測されていた部位である。細胞周期の抑制蛋白であるp19ARF、p16INK4aがこの部位に同定され、我々はp19ARFが癌抑制遺伝子であることを証明するために、p19ARFのみを欠損するノックアウトマウスを作成した。
[結果]-/-マウスの組織では、p19ARFのmRNAは認められず、p16INK4aのmRNAは発現していた。コントロール群、DMBA投与群、X線照射群に区分し経過観察したところ、腫瘍死は1歳未満のマウスでは-/-マウスのみに認められ、この内容は非投与群(56%)、DMBA投与群(100%)、X線照射群(100%)であった。腫瘍の分類はsarcomaが59%、lymphomaが19%(T cell phenotype)、gliomaが4%などであった。6例の腫瘍でp16の発現を調べ、全例陽性であった。mouse embryonic fibroblasts (MEF)を作成し、これを解析した。-/- MEFはoncogenic RAS (RAS V12)のみのtransfectionによって培養プレート中にfociを形成した。このfoci由来の細胞は軟寒天中でコロニーを形成し、SCID miceに注入すると腫瘍を形成することから、transformしていることが確認された。これらのfoci由来の細胞はp16を発現し、しかもこのp16はcylin dependent kinase 4と結合できる正常な蛋白であった。
[結語]p19ARFはTumor Suppressor Geneであることが証明され、p19ARF -/-mouseにおける腫瘍発生の分子機構にはp16の関与が否定的であることが示された。