ABSTRACT 1466(P5-11)
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ヒト大腸癌培養細胞株におけるAPC遺伝子5'側上流領域のCpG islandメチル化による遺伝子発現制御の解析:さか本喜雄1,2, 北澤理子1, 青山伸郎2, 前田 盛1, 北澤荘平1 (神戸大・医・1第二病理, 2同第二内科)

Methylation of the CpG island in adenomatous polyposis coli gene promoter alters its steady-state expression in human colorectal cancer cell lines: Yoshio SAKAMOTO1,2, Riko KITAZAWA1 , Nobuo AOYAMA2, Sakan MAEDA1, and Sohei KITAZAWA1 (12nd Department of Pathology and 22nd Division, Department of Medicine, Kobe University School of Medicine)

[目的] ヒト APC遺伝子は第5番染色体長腕から分離同定され、non-familial (sporadic)な大腸癌においても、腫瘍発生初期からその遺伝子異常が高頻度に検出される。一方、遺伝子プロモーター領域のCpG island のメチル化は、しばしば遺伝子の発現低下を来す。今回、私どもは、APC遺伝子発現機構の一端を解明する目的で、プロモーター領域内に存在するCpG island のメチル化部位とAPC遺伝子発現との関係について検討した。
[材料と方法]APC遺伝子プロモーター領域と第1イントロンとの間に存在する 30個のCpG配列を含む領域を増幅するようにプライマーを設定した (O Mikko et al., Int J Cancer,1997)。6種類の大腸癌細胞株 (Colo201, Colo320, SW480, DLD1, Ht29, WiDr )よりgenomic DNAを 抽出しSodium Bisulfite処理にて非メチル化シトシンをウラシルに変換後、nested-PCRを行った。得られたPCR産物の塩基配列を決定し、メチル化シトシンの部位を同定した。さらに上記6種類の培養細胞をサイトスピンにて伸展、又はチャンバースライドグラス上で培養したのちメタノール固定しAPC免疫染色に供した。また、生検時に採取された過形成性ポリープ、serrated adenoma、tubular adenomaのホルマリン固定標本を用いて、APC蛋白のN末端とC末端とを認識する抗APC抗体2種類についてLSAB法にて染色した。
[結果と考察]6種類の細胞株のうち、Sp1 site を中心にSW480以外の細胞株でメチル化が観察された。特に、WiDrには、CpG配列以外の部位のシトシンも含め7カ所にメチル化が認められた。メチル化は、APC遺伝子の点突然変異とは無関係に存在しており、Sp1 site のメチル化は、APC蛋白発現低下と関連していた。現在パラフィン切片から抽出したDNAを用いて非癌病変におけるAPC遺伝子プロモーター領域のメチル化の有無を検討中である。