ABSTRACT 1467(P5-11)
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遺伝学的手法を利用した大腸癌発癌制御遺伝子の単離・同定の試み:柴田浩行1,2,廣田衛久1,伊藤正規1,長谷川純崇1,高野洋志1,金丸龍之介2,野田哲生1,31癌研・研・細胞生物、2東北大・加齢研・癌化学療法、3東北大・医・分子遺伝)

Forward genetical approach to the identification of a new modifier gene involved in colorectal carcinogenesis: Hiroyuki SHIBATA1,2, Morihisa HIROTA1,Masaki ITO1,Sumitaka HASEGAWA1,Hiroshi TAKANO1,Ryunosuke KANAMARU2,Tetsuo NODA1,3,(1Dept. Cell Biol. Cancer Inst.,2Dept. Cinical Onco. IDAC Tohoku Univ., 3Dept. Mol. Genet. Tohoku Univ. Sch. Med.)

<目的>我々は、APC遺伝子に変異を導入することにより作製した家族性大腸腺腫症モデルマウスに遺伝学的手法を応用することにより新たな大腸癌発病制御遺伝子の単離・同定を目指している。<方法・結果>Apc遺伝子内にloxP配列が組み込まれ、潜在性Apc変異を持つES細胞株cl. 66にCre発現アデノウイルスを感染させることにより、Cre-loxP組換えによるエクソン14の欠失を誘導し、その結果コドン580のフレームシフト変異が導入されたES細胞を複数クローン得て、これより変異Apcマウス(Apc580D系統)を樹立した。次いで、得られた複数のマウス系統における腫瘍発生を検討したところ、殆どの系統で多数の消化管潰瘍の発生が観察されたが、唯一cl. 19系統では消化管腫瘍数が約1/10に減少していることが判明した。詳細な分子生物学的解析から、cl. 19の持つ変異Apc遺伝子にも、予想通りの形の欠失変異が導入されていることが確認された。そこで、この表現型の変化が新たな抑制性の変異の導入に基づく可能性を検証するため、戻し交配を進めて224匹の変異Apcマウスを得たところ、そのうち2匹で再び多数の腺腫の発生が認められた。この結果は抑制性変異の存在を示唆し、その抑制性変異はApc遺伝子に連鎖した近傍の遺伝子座に存在し、この遺伝子座とApc遺伝子との距離は、約1cMと推定された。現在、B6と129の2種のマウス系統間のpolymorphysmを利用して候補遺伝子座のマッピングを行っている。