ポスターセッション

一覧　トップ

FAPモデルマウスの消化管腫瘍数に影響を与えるmodifier因子の遺伝学的解析：前野哲輝¹, 田利あゆみ¹, 川井聖子¹, 伊藤正紀¹, 野田哲生^1,2（¹癌研・細胞生物, ²東北大・医・分子遺伝）

Genetical analysis of modifier genes which influence the number of intestinal tumors in FAP model mice: Akiteru MAENO ¹, Tari AYUMI ¹, Seiko Kawai ¹, Masaki ITO ¹ and Tetsuo NODA ^1,2 (Dept. Cell Biol. Cancer Inst., ²Dept. Mol. Genet., Tohoku Univ. Sch. Med.,)

【目的、方法】我々は、ジーンターゲティング法によりAPC遺伝子のコドン1309に変異を持ち、消化管に多数の腫瘍が発生する家族性大腸腺腫症 (FAP)モデルマウス(APC1309)を作製した。遺伝的背景がC57Bl/6 (B6/B6) であるAPC1309マウスを野生型マウスCAST/Eiと交配する事により得られるF1マウスでは、発生する腫瘍数が顕著に抑制された。そこで、このF1マウスをさらにB6マウスに戻し交配し、N2を得、QTL (Quantitative trait loci) 解析法を用い、腫瘍発生数に影響を与えるmodifier因子の解析を行った。【結果】APC1309マウス（遺伝的背景B6/B6)の消化管には、約６０個の腫瘍が発生するが、遺伝的背景をB6/CASTに持つAPC1309F1マウスでは、その腫瘍数は１０個までに減少した。このF1マウスをさらに、B6マウスに戻し交配して得られたN2マウスの腫瘍数は、数個から１００個まで、ばらついて存在し、modifier因子が複数存在する事が示唆された。QTL解析の結果、染色体４番、１７番に消化管腫瘍発生を抑制するmodifier因子の存在が示唆された。MinマウスはC57Bl/6マウスをエチルニトロソウレア処理して得られた、APC遺伝子のコドン850に変異を持つFAPモデルマウスで、このMinマウスの腫瘍数に影響を与える遺伝子座Mom-1 (modifier of Min-1) が染色体４番上に存在する事が既に報告されている。APC1309マウスで見つかった候補領域の一つである４番染色体は、このMom-1の領域を含んでいた。一方、CAST/Eiと同じくMom-1を持つAKR/JとAPC1309のF1マウスでは、腫瘍数は４０個に減少するのみであった。これらの事から、CAST/Eiマウスには、APC1309マウスの腫瘍数を優性に抑制する因子が複数存在し、Mom-1とは異なるModifier 因子がすくなくとも一つ存在することが示唆された。