ABSTRACT 1472(P5-12)
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軟部腫瘍におけるβ-カテニン遺伝子の異常: 岩尾恭子1,2、三好康雄1、名和厳1、吉川秀樹、越智隆弘、中村祐輔1,51阪大・バイオセ・臨床遺伝、大塚製薬・アッセイ研、大阪成人病セ・整外、阪大・医・整外、東大・医科研・ヒトゲノムシークエンス解析分野)

Mutations of the β-catenin gene in soft tissue tumors: Kyoko IWAO1,2,Yasuo MIYOSHI1,Gen NAWA1,Hideki YOSHIKAWA,Takahiro OCHI,Yusuke NAKAMURA1,5(1Dep. of Clinical Genetics, Osaka Univ., Assay Lab., Otsuka Pharmaceutical Co. LTD., Dep. of Orthop. Surg. Osaka Med. Center for Cancer,Dep. of Orthop. Surg., Osaka Univ.,Hum. Genome Center, Inst. Med. Sci., Tokyo Univ.)

軟部腫瘍の発生、進展に関与する遺伝子変異はあまり知られていない。APC遺伝子にgerm line変異を有する家族性大腸腺腫症(FAP)には大腸腺腫以外に高頻度でdesmoid腫瘍が発生し、APCの異常が腫瘍形成に関与していると考えられている。大腸癌においてはAPCの異常あるいはβ-カテニン遺伝子の異常によるβ-カテニンの蓄積(活性化)が腫瘍形成に関与していることから、 desmoid腫瘍を含む軟部腫瘍形成にβ-カテニンの異常が関与している可能性が考えられる。我々はこのような観点から軟部腫瘍におけるβ-カテニンの遺伝子異常を検索した。外科的に切除された軟部腫瘍72例(悪性47例、良性22例、分類不能3例; desmoid腫瘍 12例を含む)からDNAを抽出し、PCR-SSCP法にてβ-カテニン遺伝子のエクソン3領域を検索し、異常の認められた症例の塩基配列を決定して変異を同定した。またエクソン2から4までの領域をPCRで増幅し、転写産物のサイズを調べた。その結果、72例中、5例(desmoid腫瘍 3例, malignant fibrous histiocytoma, synovial sarcoma各1例)に異常が認められた。いずれも点変異で4例はコドン45(Ser)に、1例はコドン32(Asp)に変異を有していた。これによりdesmoid腫瘍を含む軟部腫瘍の発生・進展にβ-カテニンの異常が関与している可能性が示唆された。