ABSTRACT 1473(P5-12)
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食道癌における細胞質 β-catenin について: 木村 豊1, 塩崎 均2, 土岐祐一郎2, 井上雅智2, 辻仲利政2, 門田守人2 (1 箕面市立病院・外,2 阪大・二外)

Cytoplasmic b-catenin in esophageal cancers: Yutaka KIMURA1, Hitoshi SHIOZAKI2, Yuichiro DOKI2, Masatoshi INOUE2, Toshimasa TSUJINAKA2, Morito MONDEN2 (1Dept. of Surgery, Minoo City Hosp. 2Dept. of Surgery II, Osaka Univ.)

β-catenin(β-cat)はカドヘリンの裏打ちタンパク質として細胞接着を制御する機能と, 細胞質内では癌抑制遺伝子APCとともにWntシグナル伝達系の構成要素としての機能がある。APCの異常の多い大腸の腫瘍では, β-catが細胞質内に蓄積し腫瘍化との関与が報告されている。【目的】食道癌では, β-catの局在に関する検討は十分でない。今回, 食道の正常, 癌組織を用いて細胞質内のfreeなβ-catの同定を試みた。【方法】当科にて切除した術前未治療の食道癌症例22例を対象に, 正常, 癌組織を低張液で処理し, soluble(S)分画とinsoluble(I)分画に分け, 抗β-cat抗体, 抗E-cadherin抗体でWestern blotを行った。controlとしてMDCK, SW480細胞を用いた。【結果】正常上皮ではS分画のβ-catは9%, 癌では25%であった(P<0.01)。S分画のβ-catの発現量は癌の11例で正常上皮と同レベルで, β-catは免疫染色で膜に発現していた。残りの11例はS分画のβ-catの発現量は大きく増加し, 細胞質に発現していた。E-cadherinはI分画に含まれた。【結語】食道癌の多くの症例で細胞質内にβ-catの発現を認め, S分画のβ-catが増加していた。細胞質内のfreeなβ-catが食道癌において癌化に関与している可能性があった。