ABSTRACT 1475(P5-12)
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ヒト乳癌におけるbeta-cateninタンパク質発現の解析:矢野憲一1,斉藤広子1,松尾文恵1,吉本賢隆2,霞富士雄2,中村祐輔3,三木義男1(癌研・1 遺伝子診断・2 外科, 3 東大・医科研・ヒトゲノム)

Analysis of the expression of beta-catenin protein in human breast cancer : Ken-ichi YANO1, Hiroko SAITO1, Fumie MATSUO1, Masataka YOSHIMOTO2, Fujio KASUMI2, Yusuke NAKAMURA3, Yoshio MIKI1 (1 Dept. Mol. Diagnosis, 2 Dept. Surg., Cancer Inst., 3 Dept. Mol. Med., Inst. Med. Sci., Univ. Tokyo)

beta-cateninはカドヘリン結合タンパク質であり、Wntシグナル伝達系の構成成分としても機能していることが近年明らかになった。beta-cateninは細胞内でAPCと相互作用しタンパク質分解経路に入る。一方、細胞中にWntシグナルが伝えられるとbeta-cateninはAPCから離れ、標的遺伝子の活性化を引き起こす。大腸癌などでAPCの変異やbeta-cateninのAPC結合部位の変異が高頻度に生じることが知られており、これらの場合、APCを介した分解作用を受けないためにbeta-cateninが遊離型として細胞質に蓄積し、このことが細胞の癌化を引き起こすと考えられている。今回、我々は乳癌において細胞中にbeta-cateninタンパク質が蓄積している可能性について検討を行った。50例の乳癌からタンパク質を調製し、抗beta-catenin抗体によるWestern blot解析を行った結果、約20%の乳癌でbeta-cateninが強く発現していることを確認した。現在、このbeta-cateninが細胞質に蓄積した遊離型であるのか、またこの強い発現がbeta-catenin-APC相互作用の不全によるbeta-cateninタンパク質の安定化によるものなのか検討中である。