ABSTRACT 1479(P5-12)
 ポスターセッション一覧 トップ 


大腸腫瘍におけるβ-cateninの細胞内局在に関する免疫組織学的検討:小林正明,鈴木裕,本間照,朝倉均,味岡洋一,渡辺英伸(新潟大・医・3内,1病理)

Subcellular locarization of β-catenin in human colorectal adenomas and carcinomas: Masaaki KOBAYASHI1, Yutaka SUZUKI1, Terasu HONMA1, Hitoshi ASAKURA1, Yoichi AJIOKA2, Hidenobu WATANABE2 (13rd Dept. of Int. Med., 21st Dept. of Pathol., Niigata Univ.)

β-catenin は細胞膜に位置するものと、細胞質または核に局在するものとに区別される。前者は細胞接着を制御し、後者はWntシグナル伝達系に関与し、APC遺伝子の制御を受ける。変異APCは、大腸腺腫の発生初期より認められることから、β-cateninの細胞内動態の異常が大腸腺腫の発生に関与する可能性がある。目的:大腸腫瘍におけるβ-cateninの役割を明らかにするため、大腸正常上皮(N)、腺腫(Ad)、癌(Ca) のβ-cateninの細胞内局在 ( 細胞質、核、細胞膜 ) を検討する。材料:外科的、内視鏡的切除Ad29例、Ca56例。方法:ホルマリン固定パラフィン切片を用い抗β-catenin抗体にて免疫染色。(1)細胞質染色強度:画像解析装置を用い、細胞100個の染色濃度平均値を測定。(2)核染色態度:diffuse positive, nested, scattered, negativeに分類。(3)細胞膜染色態度:positive, weak, negativeに分類。結果:(1)細胞質:N157.5±10.9, Ad146.0±17.1, Ca135.3±20.5でAdはNより、CaはAdより有意に強かった。(2)核:N:全例negative, Ad: nested1, scattered11, negative17, Ca: diffuse20, nested10, scattered17, negative9で Ca は Adより有意に核内局在傾向が高かった。(3)細胞膜:N, Ad: 全例positive, Ca:positive37, weak15, negative4で CaはAdより有意に細胞膜の発現低下が認められた。結論:β-cateninの細胞質と核の発現は Adよりみられたが、Caでより高度であった。よって、β-cateninは大腸腺腫の発生と癌化に関与する可能性が示唆された。