ABSTRACT 1480(P5-12)
上皮系細胞のインテグリンを介する生存性維持機構に基付いた細胞癌化機構の解析:橋本 茂,真崎雄一,内田 浩,佐邊壽孝 (大阪バイオ研,第1部門)
Integrin-mediated epithelial cell survival signal and the cell transformation : Shigeru HASHIMOTO,Yuichi MAZAKI,Hirosi UCHIDA and Hisataka SABE (1st Dept, OBI)
ヒト悪性腫瘍の約85%は上皮系組織に由来し、上皮系細胞の生存性維持の制御機構を明らかにすることは癌の発症や転移・浸潤の機構を考える上で重要である。上皮系細胞の生存性維持には、増殖因子やサイトカインによる刺激に加えて、インテグリンを介する外部基質への接着が必要である。最近、このインテグリンを介する生存性維持機構において、ホスファチジルイノシトール 3キナーゼ(PI3K)からプロテインキナーゼB(PKB/Akt/RAC-PK)へ至る信号経路活性化が必須であることが報告されている。PI3Kの活性化には、PI3Kの細胞膜への移行が重要であり、増殖因子受容体からの信号伝達の際には、主としてPI3Kの制御サブユニットであるp85のSH2領域を介する細胞膜に局在するチロシンリン酸化蛋白質への結合により成される。一方、インテグリンを介した細胞基質間接着におけるPI3Kの活性化機構に関しては、接着斑局在性蛋白質チロシンリン酸化酵素であるFocal Adhesion Kinase (Fak) が示唆されているが、未だ確定していない。われわれは、PI3Kの制御サブユニットであるp85のSH2領域をプローブとして、複数種の上皮細胞抽出液において、細胞接着時に強く結合するチロシンリン酸化蛋白質を検索した。その結果、いずれの細胞においてもp85と強く結合する共通した蛋白質を検出したが、それらはFakではなかった。現在、その精製・同定を行っており、インテグリンを介するPI3K活性化機構に関して考察する。