ABSTRACT 1488(P5-13)
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ヒト大腸癌組織におけるhMSH3とhMSH6のmRNA発現量比:前川真人1,菅野康吉1,柏原秀史1,藤田伸2,垣添忠生31国立がんセ・病院・臨床検査,2外科,3院長)

Ratios of hMSH3 mRNA to hMSH6 mRNA (hMSH3/hMSH6) in colorectal cancer tissues: Masato MAEKAWA1, Kokichi SUGANO1, Hidefumi Kashiwabara1, Shin FUJITA2, Tadao KAKIZOE3 (1Clin.Lab., 2Surg., 3Director, Natl. Cancer Center Hosp.)

[目的]マイクロサテライト領域における繰り返し配列数の異常,すなわちReplication Error (RER)の原因としてミスマッチ修復機構(MMR)の異常が挙げられる.ヒトMMRに関与する遺伝子の内,殊にhMSH2とhMSH6のヘテロダイマー(hMutSα)とhMSH2とhMSH3のヘテロダイマー(hMutSβ)がミスマッチ部位を認識するのに重要である.そして,hMSH6とhMSH3の量比によってhMutSαとhMutSβのバランスが崩れ,MMRに破綻が生じると推測される.実際,hMSH3の過剰発現によってhMutSαが激減し,ミスマッチ修復能が低下した抗癌剤耐性のがん細胞株が報告されている.今回我々は,ヒト大腸癌において,hMSH6とhMSH3の発現量を比較検討した.[方法]hMSH3, hMSH6のホモロジーの高い領域に共通の蛍光標識プライマーを作成し,大腸癌の手術材料から調整したRNAを試料としてRT-PCRを行う.fluorescence-based SSCPによって分別定量を行いhMSH3/hMSH6比を算出した.[結果]35例の大腸粘膜のhMSH3/hMSH6比の平均は約2であり,概ね0.8-4.5に分布していた.大腸癌組織では対応する正常粘膜に比べてhMSH3/hMSH6比がかなり異なる例が数例見られたが,特に比が10以上か0.1以下を示したのがそれぞれ1例づつ見られた.前者は肝転移の見られた症例,後者はhMSH2・hMLH1のgerm line mutationが認められなかったRER陽性の腫瘍であった.