ABSTRACT 1534(P5-16)
LINE1レトロトランスポゾンのヒト肝臓癌での過小なメチル化:高井大哉, 森村圭一朗, 黒須由紀子, 杉村隆, 牛島俊和(国立がんセ・研・発がん)
Hypomethylation of LINE1 retrotransposon in human hepatocellular carcinomas: Daiya TAKAI, Keiichirou MORIMURA, Yukiko KUROSU, Takashi SUGIMURA, and Toshikazu USHIJIMA (Carcinogenesis Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)
LINE1レトロトランスポゾンは、ヒトゲノム内に様々な欠失・変異を伴ったものが存在し、一部のLINE1配列はendonuclease活性を保持し、細胞株ではレトロトランスポーズすることが知られている。通常、LINE1レトロトランスポゾンのプロモーター領域はメチル化を受け、その発現は抑制されている。我々は、以前、ゲノム全体についてメチル化の違いを検索するmethylation- sensitive representational difference analysis (MS-RDA)法を開発・マウス肝臓癌に応用することにより[PNAS, 94:2284, 1997]、100%のマウス肝臓癌で、LINE1配列のメチル化の低下が起きていることを見いだした。今回、ヒト肝細胞癌2例を用いて、LINE1配列のメチル化の状態を検討した。肝臓癌及び同一症例の非癌部のDNAをメチル化感受性の制限酵素で消化し、ヒトLINE1配列プロモーター領域をプローブとしたSouthern blot解析で、メチル化の状態を調べたところ、2例ともで、メチル化の状態が低下していることが判明した。LINE1配列のメチル化の低下は、その発現増加・レトロトランスポジションの増加を通じて、ゲノム不安定性に関与している可能性が高い。現在、解析数を増やして、臨床パラメーターとの相関や、LINE1のメチル化の低下の意義を検討している。