ABSTRACT 1539(P5-16)
ヒトBMP-6プロモーター領域のCpG islandメチル化による遺伝子発現制御の解析:玉田 博1,2,北澤理子1,郷司和男2,守殿貞夫2,前田 盛1,北澤荘平1 (神戸大・1第二病理,2同泌尿器科)
Methylation of the CpG island in bone morphogenetic protein-6 gene promoter alters its steady-state expression in human prostatic cancer cell lines: Hiroshi TAMADA1,2, Riko KITAZAWA1, Kazuo GOHJI2, Sadao KAMIDONO2, Sakan MAEDA1, Sohei KITAZAWA1 (12nd. Department of Pathology and 2Department of Urology, Kobe University School of Medicine)
骨形成因子(bone morphogenetic protein; BMP)はTGF-β superfamilyに属し、現在15種類が同定されている。BMP-6は単独で強い骨誘導作用を示し、in situ hybridization法にて低分化型前立腺癌におけるmRNAの発現が報告されており、造骨性骨転移への関与が推測されている。私どもは既にヒトBMP-6遺伝子プロモーター領域をクローニング、解析し報告した(BBA, Tamada et al., 1998)。今回、BMP-6プロモーター領域に存在するCpG islandのメチル化とBMP-6 mRNA発現との関係を種々の前立腺癌細胞株にて解析した。細胞株(PC3, PC3M, LNcap, DU145)各々におけるBMP-6 mRNAの発現を2種類のプローブ(full length cDNA; Genetics Inst.及びRT-PCRにて増幅したexon2内のpartial cDNA)を用いたNorthern blot法にて検討した。BMP-6プロモーターとluciferase遺伝子とを結合したreporter gene constructを作成し、 各細胞株にtransfection後luciferase活性を測定した。更に各々の細胞株より抽出したgenomic DNAを Sodium Bisulfite処理にて非メチル化cytosineをuracilに変換後、BMP-6プロモーター内に設定したプライマーを用いてPCRを行った。得られたPCR産物の塩基配列を決定し、メチル化部位を同定した。PC3, PC3Mにおけるプロモーター活性は320, 308 (light unit/mg protein)と高値を示し、LNcap, DU145は85, 65 と低値であった。Northern blot法では、PC3Mにおいては3.8kbのバンドを認めたが、CpGメチル化修飾を受けていたPC3では、exon2プローブにてバンドは見られずfull length cDNAにて2.4kbのバンドを認めた。プロモーター活性の低いDU145, LNcapでは、3.8kbの部位に弱い発現が見られた。メチル化cytosineはPC3においてのみSp1 siteを中心に高頻度に認められた。PC3Mは、PC3を親株として樹立された細胞株であり、PC3MにおけるBMP-6発現にはプロモーター領域の脱メチル化による活性化が関与していることが示された。PC3においてサイズの異なるBMP-6 mRNAが観察されたことより、BMP-6プロモーター領域のメチル化修飾がBMP-6 mRNAのalternative splicingに関与していると推定された。