ABSTRACT 1540(P5-16)
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マウス肝臓癌で過剰なメチル化を受けるDNA断片F8領域の解析:黒須由紀子, 森村圭一朗, 杉村隆, 牛島俊和(国立がんセ・研・発がん)

Analysis of a DNA fragment, F8, which is hypermethylated in mouse liver tumors: Yukiko KUROSU, Keiichirou MORIMURA, Takashi SUGIMURA, and Toshikazu USHIJIMA (Carcinogenesis Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)

遺伝子のメチル化の異常は、遺伝子発現の異常等を通じて、発がんに深く関与している。我々は、ゲノム全体について、メチル化の状態の変化を検索するmethylation-sensitive-representational difference analysis (MS-RDA)法を確立した [PNAS, 94:2284, 1997]。また、同法を食品中の発がん物質2-amino-3,4-dimethylimidazo [4,5-f]quinoline (MeIQ)により誘発されたマウスの肝臓癌に応用することで、多くのマウス肝臓癌で過剰なメチル化を受けるDNA断片を4個同定した。本年は、これらの過剰なメチル化を受けるDNA断片のうちマウス染色体6番にマップされた“F8”に関して、近傍に存在する遺伝子を同定するため、周辺のゲノムDNAを25.4kbにわたりクローニングし、F8近傍4,812bpについて塩基配列を決定した。F8近傍に、約200bpに渡り、G:C含量60%、CpG observed / expected 0.4の領域が認められたが、CpG islandと断定するには至らなかった。F8周囲約5kbに存在する5個のHpaII部位のメチル化の状態の解析により、F8を含む約1.6kbのゲノム領域は、正常な肝臓ではメチル化されずに保持されているものの、肝臓癌ではメチル化を受けていることが判明した。現在、bisulfite法により、塩基レベルでメチル化の分布を検討し、発がんに関与する遺伝子の有無を調べている。