ABSTRACT 1558(P5-17)
膵癌の発生・進展に関与する癌抑制遺伝子〜12q22-q23.1の650-kbの共通欠失領域からの遺伝子同定:八岡利昌1,2,古川徹1,阿部忠義1,2,木村光宏1,2,福重真一1,砂村眞琴2,小針雅男2,松野正紀2,堀井明1(東北大・医・1分子病理, 2一外)
Detailed analysis of a 650-kb region of common allelic loss on 12q22-q23.1 in human pancreatic cancer : Toshimasa YATSUOKA1, 2, Toru FURUKAWA1, Tadayoshi ABE1, 2, Mitsuhiro KIMURA1, 2, Shinichi FUKUSHIGE1, Makoto SUNAMURA2, Masao KOBARI2, Seiki MATSUNO2, and Akira HORII1 (Depts. 1Mol. Pathol., 2Surg. I, Tohoku Univ. Sch. Med.)
膵癌は難治がんの代表格であり,かつ近年増加傾向が顕著である。しかし,その発がん機構は未解明のままであり,ゆえに膵癌の発生・進展に関与する遺伝子異常の解明は重要な意義をもつ。われわれは,膵癌切除例96例と19種の膵癌培養細胞株を対象に,CGH,マイクロサテライトマーカーによるPCR,FISH等の技術を駆使した染色体異常の解析を行い,未知の癌抑制遺伝子が 1p, 6q, 12qに存在する可能性を示唆する所見を得た。特に12qにおいては複数の腫瘍で特異的なinterstitial deletionを認めたため,12qにターゲットを絞った。詳細な欠失地図の作成により,2カ所の高頻度欠失領域(12q21,12q22-q23.1)を同定したが,本研究ではその内の後者からの癌抑制遺伝子の単離に挑戦している。この領域のLOHは60%と高頻度である。まず,同領域についてYAC,BAC, PACによるcontigを完成させたが,その結果,12q22-q23.1の欠失領域は650kb以内と考えられ,また,rare cutter siteの解析によりCpGアイランドの存在の可能性も示唆された。さらに,ゲノムデータベースから同領域のESTも同定し,またcDNAスクリーニングにより欠失領域及びその近傍から複数の遺伝子を同定している。現在これらの遺伝子については発がんとの関連を検討中である。12q22-q23.1は膵癌以外にも胃癌やgerm cell tumorなど他の癌における高頻度欠失領域でもあるため, 候補遺伝子の異常は膵癌のみならず複数の癌の発生・進展に関与している可能性が高いと思われる。