ABSTRACT 1562(P5-17)
二次性白血病における12番染色体短腕欠失
― 病期の進展とTEL遺伝子のhemizygous deletion ―:
鵜池直邦1,石前峰斉2,田中公夫2,鎌田七男2
(1九州がんセ・造血,2広島大・原医研・分子細胞遺伝)
Deletion of chromosome 12p in secondary AML
- disease evolution and hemizygous deletion of the TEL gene - :Naokuni UIKE1, Minenori ISHIMAE2, Kimio TANAKA2, Nanao KAMADA 2 (1Dept. of Hematol., Natl. Kyushu Cancer Ctr., 2Dept. of Cancer Cytogenet., Res. Inst. for Nuclear Med. and Biol., Hiroshima Univ.)
【目的】病期の進展に伴って12番染色体短腕欠失[del(12)(p12p13)]が単独異常として出現した二次性AML症例において、12p13に存在するTEL遺伝子の関与様式を明らかにすることを目的とした。【症例】69歳女性。再発乳癌に対する化学療法132カ月後にMLL遺伝子tandem
duplication (exon2-8)を伴ったMDS(RAEB)を経てAML(M4)発症。化学療法で芽球減少するも13カ月後、染色体異常[46,XX→46,XX,del(12)(p12p13)15/20]出現と同時に芽球が急増し患者はその2カ月後腫瘍死した。【方法】del(12) (p12p13)が出現した末期の骨髄細胞をサンプルとして、1)TEL遺伝子(501bp exon5 cDNA)をprobeとしたSouthern blot(制限酵素;Bam HI、Eco RI)および 2)TELとp27KIP1遺伝子領域を含む964c10YACをprobeとしたFISHにてTEL遺伝子の関与様式を検討した。【結果】1)Southern blotではいずれの制限酵素を用いてもgerm line bandのみを認め、TEL遺伝子の再構成はなかった。2)FISHの結果、分裂像では正常12番染色体上にのみ964c10YACのシグナルを認め他方の12番染色体上にはシグナルはみられず、間期核では500細胞中305個の細胞に1個の964c10YACシグナルが観察された。またFISHにおいても12番染色体短腕を含む転座は認めなかった。以上より、del(12)(p12p13)を示す細胞はTEL遺伝子のhemizygous deletionが存在するものと思われた。
【考案】小児ALL、CMMoLなどにおいては相互転座によるTEL遺伝子再構成(相手遺伝子との融合遺伝子形成)がその発症(leukemogenesis)に重要とされている。本症例おいてはTEL遺伝子のhemizygous deletionが二次性AMLの進展に関与し得ることが示され、TEL遺伝子の癌抑制遺伝子としての性格が示唆された。