ABSTRACT 1564(P5-18)
コンディショナル・ジーンターゲッティング法を用いたTsc2遺伝子の機能解析:小林敏之1,樋野興夫1,高野洋志2,3,長谷川純崇2,美野輪治2,野田哲生2,3(1癌研・研・実験病理,2細胞生物,3東北大・医・分子遺伝)
Functional analysis of mouse Tsc2 gene using conditional gene targeting : Toshiyuki KOBAYASHI1, Okio HINO1, Hiroshi TAKANO2,3, Sumitaka HASEGAWA2, Osamu MINOWA2, Tetsuo NODA2,3(1Dept. Exp. Pathol., 2Dept. Cell Biol., Cancer Institute, 3Dept. Mol. Genet., Tohoku Univ. Sch. Med.)
【目的】我々は昨年の本学会で、ヒト結節性硬化症の原因遺伝子であるTSC2のホモログ(Tsc2)のノックアウトマウス(Tsc2-44マウス)を作製し、変異Tsc2ヘテロ接合体マウスはEkerラットと同様に遺伝性腎癌を発症するが、ホモ接合体変異マウスは胎生期に致死となることを報告した。今回我々は、組織・時期特異的な変異の導入によりこの胎生期における致死を回避し、マウス成体組織でのTsc2の機能解析を行うことを目的として、コンディショナル・ノックアウトマウスを作製した。
【方法】部位特異的組換えの系はCre-loxPシステムを用いた。Tsc2のエクソン3、4を挟む形で、同じ向きの一対のloxP配列がイントロン内に挿入された変異Tsc2アレル(Tsc2-FloxPアレル)を持つマウスの系統を樹立した。
【結果】Tsc2-FloxPマウスとTsc2-44マウスとの交配を行い、Tsc2-44アレルとのコンパウンドヘテロ接合体が生存することを同定し、Tsc2-FloxPアレルが機能的に保持されていることを確認した。さらにCAG-Creトランスジェニックマウスとの交配を行い、in vivoでCre組換え酵素を発現させることにより、Tsc2-FloxPアレルのloxP配列間で組換えが生じ、エクソン3、4が欠失することを確認した。我々は現在、Cre-組換え酵素を発現する組換えアデノウィルスを用いたin vivo、in vitroの実験系や、組織特異的プロモーターによりCreを発現するトランスジェニックマウスとの交配による解析を進めており、それらの結果を併せて報告する。