ABSTRACT 1582(P5-20)
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子宮内膜癌における FHIT 蛋白発現の免疫組織学的検討:由良泰一郎、小西郁生、万代昌紀、南部香成子、黒田英樹、HAMID A. Atia、鶴田優子、草刈孝史、藤井信吾(京大・医・産婦)

Immunohistochemical analysis of FHIT protein expression in endometrial carcinomas: Yasuichiro YURA, Ikuo KONISHI, Masaki MANDAI, Kanako NANBU, Hideki KURODA, Atia A. HAMID, Yuko TSURUTA, Takashi KUSAKARI, Shingo FUJII (Dept. of Gyn/Ob, Kyoto Univ.)

[目的]癌における FHIT 遺伝子異常が注目され、最近、子宮頚癌および肺癌における FHIT 蛋白の発現低下が報告されている。我々は子宮内膜癌における FHIT 遺伝子の翻訳開始コドンを欠く異常転写産物の発現を報告したが、今回、FHIT の蛋白発現を正常子宮内膜および内膜癌において検討した。[方法]正常子宮内膜 10 例 (増殖期 5 例、分泌期 5 例)、内膜癌 24 例について、抗 FHIT 蛋白ポリクローナル抗体を用い免疫染色を行った。[結果]FHIT 蛋白は正常内膜基底層の腺上皮において高発現しているが、一方、機能層の腺上皮ではその発現が低下し、細胞増殖と逆相関する傾向が認められた。分泌期内膜では層構造による発現の差異は認められなかった。内膜癌では、24 例中 8 例 (33%) に FHIT 蛋白の明らかな発現低下が認められた。臨床病理学的所見との相関をみると、FHIT 蛋白の発現低下は癌の組織学的分化度が grade 3 の症例で 7 例中 6 例 (86%) と、grade 1/2 の症例に比し有意に高率に認められた。また、同一切片上で FHIT 発現に heterogeneity が認められる症例があり、これらではより低分化な癌の部分に FHIT 蛋白の発現が低下していた。[結論]正常子宮内膜においては、FHIT 発現が内膜腺上皮の増殖調節に関与している可能性が示唆された。子宮内膜癌の約 1/3 において FHIT 蛋白の発現低下が認められ、FHIT 遺伝子が内膜癌の発生または進展に関与している可能性が示唆される。