ABSTRACT 1585(P5-20)
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骨髄異形成症候群(MDS)におけるWT1遺伝子変異の解析: 細谷紀子1, 宮川清2, 三谷絹子1, 矢崎義雄1, 平井久丸11東大・医・3内、2広島大原医研分子病理)

Mutation analysis of the WT1 gene in myelodysplastic syndrome.: Noriko HOSOYA1, Kiyoshi MIYAGAWA2, Kinuko MITANI1, Yoshio YAZAKI1, and Hisamaru HIRAI1 (13rd Dept., Int. Med., Fac., Med., Univ. of Tokyo, and 2Dept.of Molecular Pathology, Research Institute for Radiation Biology and Medicine, Hiroshima Univ.)

(目的)WT1遺伝子は、小児に発症するウイルムス腫瘍の癌抑制遺伝子としてクローニングされた遺伝子で、N末端側にプロリンに富む転写抑制ドメインを、C末端側にDNA結合能を有するZnフィンガードメインをコードする転写因子である。近年、急性白血病の症例でWT1遺伝子の異常があることが報告された。今回、骨髄異形成症候群(MDS)におけるWT1遺伝子の異常の関与の有無を調べるため、以下の実験を行った。
(方法)WT1遺伝子について、exon 1〜4, 6〜10を増幅するような9組のプライマーを設定した。MDS 44例(内訳:RA: 12例、RAEB:9例、RAEB in T: 2例、CMMoL: 4例、MDS overt leukemia: 17例)の骨髄単核球より抽出したDNAを鋳型としてPCR-SSCP法にて構造異常の有無のスクリーニングを行い、bandのシフトを認めたものについてはsequence解析を行った。
(結果)MDS overt leukemiaの1例において、WT1遺伝子のexon 7, Zinc fingerの直前のcodon 314に相当する部位に4塩基対(TCGG)が挿入され、codon 317が終止codonに置換されていた。正常なalleleは検出されなかった。他の43例では、WT1遺伝子の変異は検出されなかった。
(考察)MDSにおけるWT1遺伝子の変異の頻度は低いと思われる。ただし、予後不良のMDS overt leukemiaの1例のみでWT1遺伝子の変異を認め、RA, RAEB, RAEB in T, CMMoLの症例ではWT1遺伝子の変異を全く認めなかったことから、WT1遺伝子の変異の有無がMDSの進行や予後と相関する可能性も示唆される。