ABSTRACT 1587(P5-20)
白血病細胞株におけるDCC遺伝子およびNF1遺伝子の発現の検討:狩野博嗣、石井雅巳、田渕 健、許 鳳、孔 暁棠、滝 智彦、別所文雄、林 泰秀(東大・医・小児)
Absent or reduced expression of the DCC and NF1 genes in leukemia cell lines : Hirotsugu KANO, Masami ISHII, Ken TABUCHI, Feng XU, Xiao-Tang KONG, Tomohiko TAKI, Fumio BESSHO, Yasuhide HAYASHI (Dept. Pediatr., Faculty Med., Univ. Tokyo)
【目的】DCC (deleted in colorectal carcinoma)遺伝子およびNF1(neurofibromatosis type I)遺伝子は、いずれも癌抑制遺伝子と考えられており、種々の固形腫瘍において発現の消失および減弱が報告されている。今回我々は、これらの遺伝子の白血病における発現を検討した。【対象と方法】対象は、白血病細胞株69株で、内訳はearly preB-ALL15株、preB-ALL8株、B-ALL11株、T-ALL14株、AML16株、CML5株である。これらよりRNAを抽出し、RT-PCR法によりDCC遺伝子およびNF1遺伝子の発現の検討を行った。【結果】DCC遺伝子の発現の消失または減弱がみられたのは、early preB-ALL15株中5株、preB-ALL8株中7株、B-ALL11株中2株、T-ALL14株中7株、AML16株中14株、CML5株中4株であった。NF1遺伝子の発現の消失または減弱がみられたのは、early preB-ALL15株中5株、preB-ALL8株中3株、B-ALL11株中3株、T-ALL14株中4株、AML16株中7株、CML5株中4株であった。両遺伝子とも発現が消失あるいは減弱していたのは、early preB-ALL15株中1株、preB-ALL8株中3株、B-ALL11株中1株、T-ALL14株中2株、AML16株中6株、CML5株中3株であった。【考察】DCC遺伝子の発現の消失または減弱は、preB-ALL、AML、CMLにおいて頻度が高かった。一方、NF1遺伝子の発現の消失または減弱は、リンパ系よりも骨髄系の白血病で多くみられ、DCC遺伝子とNF1遺伝子の白血病の発症あるいは進展への関与には異なる機序が示唆された。