ABSTRACT 1664(P6-4)
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食道癌におけるCD44発現と臨床病理学的意義:後藤田卓志1、松村保広1、加藤抱一2、中西幸浩3、垣添忠生4(国立がんセ・中央病・1内、2外、4病院長、3国立がんセ・研・病理)

Clinicopathological significance of the expression of CD44 variant isoforms in esophageal cancer:Takuji GOTODA1, Yasuhiro MATSUMURA1, Hoichi KATO2, Yukihiro NAKANISHI3, Tadao KAKIZOE4 (1Int. med. Div., 2Surg. Div., 3Pathol. Div., 4Director, Natl. Cancer Center)

【目的】接着因子CD44分子には選択的splicingにより発現された種々のvariant (CD44v)が存在し、腺癌においてはその発現が予後不良に関連するという報告が多い。しかし、頭頚部癌などの扁平上皮癌では逆に発現するもの程予後良好という報告がある。今回CD44分子の発現と食道扁平上皮癌の臨床病理学的因子および予後との関連を検討した。【方法】1987-96年に切除された、Stage IIまたはIII、112症例(mean age; 62.9, M/F=100/12)のホルマリン固定パラフィンのSTUF下マイクロウェーブ処理後、CD44 st, v2, v6に対するモノクローナル抗体で免疫染色を行った。【結果】(1)全症例において非腫瘍粘膜では、CD44s, v6, v2いずれも発現が認められた。腫瘍部では、v6発現は全例に認められたが、v2発現は47 / 112 (42%)であった。(2)臨床病理学的にはv2発現陰性と再発に統計学的な有意差を認めた(P=0.019)。しかし、再発部位との関連は認めなかった。また、脈管侵襲と相関傾向を示した(P=0.094)。(3)生存率においてv2発現陰性例は陽性例に比べ有意に予後が悪かった (Logrank; P<0.001, Wilcoxon; P=0.002)。【考察】v2を含むvariant CD44タンパクの発現陰性は予後不良の因子であることが示された。また、このことは腺癌の報告とは逆の結果であり、CD44の発現においては組織特異性の存在が示された。さらに発現陰性は再発と相関し、脈管侵襲とも相関傾向を示したことから転移浸潤との関連も予想され、予後および転移を推測する有用なマーカーになる可能性がある。