ABSTRACT 1678(P6-4)
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甲状腺乳頭癌における oncofetal fibronectin の発現と組織内分布:中村 靖司1,辻本 正彦2,覚道 健一11和歌山医大・病理,2大阪警察病院・病理)

Oncofetal fibronectin in thyroid papillary carcinomas: Yasushi NAKAMURA1,Masahiko TSUJIMOTO2,Kennichi KAKUDO1 (1Dept. of Pathology, Wakayama Medical College,2Div. of Pathology, Osaka Police Hosp.)

Oncofetal fibronectin (onf FN) は,fibronectin 遺伝子より alternative splicing により,oncofetal domain が付加されたもので,正常では発現せず,乳癌や大腸癌において発現がみられ,悪性度と相関することが報告されている.Takano らは SS-DD 法を用いた甲状腺癌特異的発現遺伝子の解析により,甲状腺乳頭癌に強い特異性をもって発現がみられることを報告している.
【目的】甲状腺乳頭癌での組織内 onf FN の発現・分布様式を検討し,乳頭癌の組織構築ならびに浸潤・転移への関わりを明らかにする.【材料・方法】外科的に切除された甲状腺乳頭癌より通常組織標本を作成し,FDC-6 抗体(Hakomori, et al. onf FN IIICS domain を認識する)免疫組織化学を行い,組織内分布を検討した.【結果】現時点まで,10例の乳頭癌すべてが onf FN を主として乳頭状構造間質ならびに腫瘤ごく近傍の間質に認めた.一部の乳頭癌細胞では細胞質内にも発現がみられた.癌胞巣周囲に取り囲むように onf FN 束がみられ,乳頭構造内に入り込み,乳頭構造の分枝に沿っていた.甲状腺外組織浸潤部では癌胞巣周囲に取り囲むようにみられた.癌細胞のほとんどみられない線維化巣やリンパ節転移巣でも onf FN が観察された.これらの分布は tenesin の血管近傍の発現とは異なり,組織修復・線維化機転以外に,乳頭癌の乳頭構造の構築ならびに癌浸潤に関わっている可能性が考えられた.現在,症例を増やすとともに,培養系での検討を行っている.