ABSTRACT 1683(P6-5)
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卵巣明細胞腺癌由来新規樹立細胞株(SMOV-2)の特性ならびに増殖に及ぼす各種制癌剤の影響:飯田智博1, 与那嶺京子1, 林 和彦1, 品川俊人21聖マリ医大横浜西部病・婦, 2聖マリ医大・第1病理)

Establishment of a cancer cell line (SMOV-2) from the clear cell adenocarcinoma of ovary, and influence of anti-cancer drugs on its growth: Tomohiro IIDA1, Kyoko YONAMINE1, Kazuhiko HAYASHI1, Toshihito SHINAGAWA2 (1Dept. of OB-GYN., St. Marianna Univ. Yokohama Seibu Hosp., 2Dept. of 1st. Dev. of Pathol., St. Marianna Univ.)

【目的】進行卵巣癌の予後は,制癌剤治療の可否により強く影響される。とりわけ従来の標準的治療に低感受性の明細胞腺癌の予後は不良である。今回我々は手術摘出検体より新たな卵巣明細胞腺癌培養細胞株(SMOV-2)を樹立し,制癌剤感受性について他の明細胞腺癌株であるOVAS-21も用いて比較・検討したので報告する。【方法】[症例]46歳,1995年10月頃下腹部膨満感出現10月17日初診し,血中CA125 4250U/ml。画像診断で卵巣癌を疑い,翌1996年1月16日手術施行。術中ならびに術後病理組織学的検索で卵巣明細胞腺癌IIIc期と診断,術後CAP療法6コース施行したが効果認めず肝転移出現し11月7日死亡した。[株樹立]手術当日摘出された原腫瘍の一部にトリプシンによる細胞分散法を行い,10%FCS加Eagle's MEMを加え37℃ CO2 incubatorで静置培養を開始した。培養当初より線維芽細胞の混入を認めず株化に成功しSMOV-2と銘名した。[制癌剤感受性]TetraColorONE-AssaySystemを用いてCisplatin(P), Paclitaxel(T), Etoposide(E)による細胞増殖抑制作用について評価した。【結果】薬剤72時間接触後のSMOV-2のIC50は,Pで1.12μg/ml, Tで1.65μg/ml, Eで2.13μg/mlであり臨床経過からはP抵抗性とも考えられたにも関わらずPの感受性は良好であった。一方OVAS-21のIC50は,Pで3.08μg/ml, Tで0.92μg/ml, Eで1.50μg/mlでありTが最も感受性良好と考えられた。【結論】症例は臨床的にP抵抗性と考えられたが,SMOV-2株をもちいた検討ではP感受性を認めた。また,Tはどちらの細胞株に対しても感受性を認めた事から,卵巣明細胞腺癌の治療にはP+Tが有用であることが示唆された。