ABSTRACT 1685(P6-5)
ヒト乳癌細胞株 (HBGT-10)の樹立とその性状; 城子康子1, 増永敦子2, 藤井祐三3,, 竹田雅司4, 辛栄成5, 中村寿良1, 荒井 勉1, 蓮見賢一郎1, 関口守正6 (1蓮見癌研, 2東大医科研・検査部, 3,聖ケ丘病院, 4豊中市立病院・病理, 5国立大阪病院・外, 6埼玉医大・1外 )
Establishment and characterization of a human mammary cancinoma cell line,HBGT10; Yasuko SHIROKO1, Atsuko MASUNAGA2, Yuzo FUJII 3,, Masashi TAKEDA4, Eisei SHIN5, Hisayoshi NAKAMURA1, Tsutomu ARAI1, Ken- ichiro HASUMI1, Morimasa SEKIGUCHI4 (1Electro Chem.& Cancer Inst., 2Lab.Med.,Inst. Med.Sci.,Univ.Tokyo, 3,Hijirigaoka Hosp., 4Dept.Patho.,Toyonaka Munic.Hosp, 5Dept.Surg.,Natl.Osaka Hosp., 6Dept.Surg.I,Saitama Med. Sch.)
[目的] ヒト乳癌細胞株の樹立を試みた。[材料]患者は48歳女性、1987年8月に両側性乳癌のため手術を受けた。病理診断は、右が乳頭腺管癌+硬癌、左が乳頭腺管癌であった。ホルモンレセプターの測定ではERが5.1fmol/mg、PRは検出されなかった。90年からリンパ節転移、骨転移、胸水貯留、皮膚転移、腹腔内リンパ節転移、腹水貯留などの経過を経て95年9月死亡した。腹水を培養して、約1年後に樹立株を得た。[結果]細胞は浮遊状態で増殖し、増殖曲線より算出した倍加時間は98時間であった。ギムザ染色では大小不同の細胞が、一部は単細胞で、一部は数個の集塊として、一部は連珠状に増殖した。核は大きく、多核の細胞もみられた。ヌードマウスに移植可能だが、増殖は極めて遅かった。解剖の結果、転移、浸潤は見られず腫瘍組織のHE染色では原腫瘍と類似していた。ホルモンレセプターの検索ではER、PRともに陰性であった。染色体数は76-84に分布し、モードは81にあり、Gバンド法による核型分析では、いくつかの構造異常がみられた。細胞の免疫染色でCK、EMAは陽性、L-26、LCAは陰性であった。培養上清中にはTPAが高値であったが、CEA、NCC-ST439、CA15-3、BCA225の産生はなかった。RT-PCR法での遺伝子発現ではnm23-H1、nm23-H2、p53のmRNAの発現が認められた。