ABSTRACT 1687(P6-5)
マウス肝転移性腫瘍株HIG-Oの樹立とその生物学的特性:畠山 幸紀1、入江宏2(1 弘前大・農学生命科学・応用生命工学, 2 帝京大・医・病理)
Establishment and characterization of mouse tumor cell line HIG-O with spontaneous liver metastasis : Koki HATAKEYAMA1, Hirosh IRIE2 (1 Dept. of Agri. and Life Science, Hirosaki Univ, 2 1st. dep. of Pathology, Univ. of Teikyo. )
1995年7月にBDF1マウス(110週齡、雌)に自然発症した肝腫瘍を継代培養し、マウスに移植可能な肝転移性細胞株HIG-Oを樹立した。その生物学的特性について報告する。HIG-O細胞は細長い紡錘形の細胞で、コマ撮りビデオ撮影装置による観察では運動性は低かった。組織学的には round cell sarcoma であった。HIG-O細胞を同系マウスに100,000個皮下移植したとき、腫瘍の成長速度は遅く、死亡時平均で直径15 mm 以下(体重の2%以下)、生存日数は94±2 日であった。しかし肝臓は転移により全体重の23% (cont. の6.5倍)を占めるまで肥大していた。病理的観察および組織培養法により脾臓、腎臓、大腿骨の骨髄でも腫瘍細胞の存在を確認した。肝臓への転移は iv, sc, ip いずれの移植経路でも認められた。またRT-PCR法によりIL-1a, IL-6, ICAM-1 mRNAを検出した。これらは同じく肝転移を示す他の細胞株(P815, L5178 Yなど, Takeda, et al. , Jpn. J.Res.1991)の傾向と一致した。HIG-O株は転移機構の解明や、治療実験の新しいモデルとして有用であると思われる。