ABSTRACT 1689(P6-5)
4NQO誘発ラット舌扁平上皮癌細胞株からの多様な転移能を有する亜株の樹立:竹内伸一1,2, 中西速夫1, 大前岳人1,2, 加藤麦夫2, 吉田憲司2, 立松正衞1(1愛知がんセ・研・1病理, 2愛知学院大・歯・1口外)
Isolation of variant cell lines with different metastatic potentials from 4NQO-induced rat tongue squamous carcinomas : Shinichi TAKEUCHI1,2, Hayao NAKANISHI1, Gakuo OHMAE1,2, Mugio KATO2, Kenji YOSHIDA2, Masae TATEMATSU1 (1Lab. Pathol., Aichi Cancer Center Res. Inst., 21st Dept. Oral and Maxillofac. Surg., Sch.Dent. Aichi-Gakuin Univ.)
【目的】一昨年度の本学会において,4NQO誘発ラット舌扁平上皮癌由来細胞株の樹立について報告した.本年度は,本株より多様な転移能を有する亜株を分離し,その生物学的特性について検討したので報告する.【材料と方法】F344ラットに4NQOで誘発したラット舌扁平上皮癌由来細胞株(RSC3-P/親株)より,1)in vitro限界希釈法,2)肺転移巣のin vivo selection,3)in vitroにおいて5 Gy 2回の放射線照射後の肺転移巣からの株化等の方法を用い,亜株を作成し諸性質を検討した.【結果および考察】親株のRSC3-Pはヌードマウス皮下移植により肺転移およびリンパ節転移を認めた.本株より限界希釈法にて非転移性RSC3-E2株を,親株のヌードマウス肺転移巣より100%の頻度で転移する高転移性RSC3-LM株を,また非転移性株への放射線照射により,肺以外に腎にも約80%の頻度で転移する多臓器転移性RSC3-E2R株を樹立した.ヌードマウス皮下移植では,PおよびLM株では,リンパ節転移を認めたが,E2R株では認めず,さらにLM株は癌性腹膜炎を認めた.in vitro, in vivoにおける増殖能ではLM>P>E2R>E2であった.染色体分析では,P株のモードが78, 83で2峰性を認め,LM株が78,E2株が83とLM, E2株がP株由来であることが示された.現在,matrix metalloproteinase (MMP) 等の発現およびp53の突然変異,LOHなどの遺伝子解析をすすめており、合わせて報告する予定である.本株は口腔扁平上皮癌における転移形成の解析に有用なモデルになりうるものと考えられた.