ABSTRACT 1707(P6-6)
正常マウス血清の同系腫瘍細胞に対するcytotoxic effectについて:谷垣由美子1, 北村肇3, 北野悦子3, 西澤恭子2, 山本章史2, 明渡均4, 寺田信行4(1大阪成人セ・研・細胞生物, 2病理, 3大阪看護大・医短部, 4兵庫医大・第一病理)
Cytotoxic activity of normal mouse serum on mouse tumor cell in vitro:Yumiko TANIGAKI1, Hajime KITAMURA3, Etsuko KITANO3, Yasuko NISIZAWA2, Takashi YAMAMOTO2, Hitoshi AKEDO4, Nobuyuki TERADA4 (1Dept.of Cell Biol., 2Dept.of Pathol., Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 3Osaka Pref.Coll.of Health Sciences, 4Dept. of Pathol., Hyogo Coll. of Med.)
[ 目的]生体内に於いては、腫瘍の増殖と共に数多くのがん細胞が血中を循環している。しかしその数に比べ実際の転移の形成は非常に少ない。そのメカニズムの1つとして流血中のがん細胞にホスト側の生体防御作用が働き転移の形成を阻止している可能性が考えられる。そこでマウス由来の各種腫瘍細胞に対する正常マウス血清の影響を検討した。
[方法と結果]C57BL/6マウス由来のB16メラノーマFE細胞を、10〜30%のC57BL/6マウス血清を含む培養液中で培養すると濃度依存性に細胞死が起こった。顕微鏡下で培養24時間後に脂肪変性が、48時間後に多くの細胞の死滅が観察された。核DNAのアガロース電気泳動上、ネクローシスのパターンが認められた。この現象はFE細胞だけでなくマウス由来の他の腫瘍細胞(Gー1、Gー5肝がん細胞、コロン26細胞)にも認められた。56℃、30分処理により補体を失活させても、また補体第5成分欠損マウスの血清を用いてもこのマウス血清による効果があった。このマウス血清による細胞死は補体の作用によるものではないと考えられる。更にこの活性は100℃、10分処理では失活せず非透析性であった。
[結論]以上の結果は、正常マウスの血清中には同系マウス由来の腫瘍細胞を死に至らしめる、補体とは異なる成分が存在することを示唆する。