ABSTRACT 1711(P6-6)
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ヒト骨肉腫(OST strain)移植ヌードマウスにおける血液凝固第XIII因子の変動について;中山温広、坂山憲史、木谷彰岐(愛媛大;整外)

Changes of the coagulation factor XIII in serum of nude mouse treated with human osteosarcoma cell line (OST Strain) ; Atsuhiro NAKAYAMA, Kenshi SAKAYAMA, Teruki KIDANI(Dept. Orthopaedic Surg., Ehime Univ. Sch. Med.)

(目的)我々は、ヒト悪性骨軟部腫瘍患者において創傷治癒に深く影響する血液凝固第XIII因子(以後F13と略す)が有意に低下した症例が多いことを発表した。しかし、これらの中で骨肉腫に代表される骨形成性腫瘍患者では低下していない症例を多く認めた。そこで、ヒト骨肉腫細胞を移植したヌードマウスを用いた実験で、血清中のF13動態を検討した。(方法)ヒト骨肉腫細胞のCell lineであるOST細胞を用いた。このCell lineはヌードマウスに移植すると、類骨形成を誘導し、数ある骨肉腫のCell lineの中で最も骨肉腫の性格を顕著に表すことが知られている。この細胞にLong termで種々の影響を与えることが知られているSteroid、及びTNFを加えて培養したOST細胞を生後3週の雌ヌードマウス(Bulb/c)に1匹当たり105 個移植した。充分に腫瘍が成熟した段階(腫瘍重量が全体中の約25%)で麻酔下に屠殺し、血清中のF13を測定した。(結果)骨肉腫接種マウスでは、有意にF13の値が増加していた。とりわけ、Steroidで処理したOST細胞を移植したヌードマウスの血清F13は高値を示した。(考察)一般に悪性腫瘍患者ではF13の低下が創傷治癒遅延を誘発すると報告されている。しかし、骨肉腫患者ではF13は低下していないことが多く、骨肉腫移植ヌードマウスではF13は正常マウスの約4倍の値であり、(1)骨肉腫細胞自体が分泌されている可能性と(2)骨肉腫細胞から出される様々な因子がF13合成・分泌を促進してい可能性とが考えられる。血液凝固カスケードの最終段階において、カルシウムイオン存在下に活性化されたF13は可溶性フィブリンの基質フィブリン分子間に架橋形成する作用を持っているとされ、我々はこの段階に着目し現在検討中である。骨肉腫患者では他の腫瘍患者とは逆に、創傷治癒が起こりやすいと考えられる。
Key words : Osteosarcoma(骨肉腫)、Human(ヒト)、Factor ィ。(血液凝固第XIII因子)