ABSTRACT 1757(P7-2)
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新規転移抑制剤Urinary Trypsin Inhibitorの結合蛋白の同定と細胞内への取り込みに関する検討:平嶋泰之,小林浩,大井豪一(浜松医大産婦)

Identification of the binding protein of new anti-metastatic agent, urinary trypsin inhibitor and the study of its uptake: Yasuyuki HIRASHIMA, Hiroshi KOBAYASHI, Hidekazu OHI (Dept.of Obstet. and Gyne., Hamamatsu Univ. School of Med.)

【目的】我々はヒト羊水および尿中から精製したurinary trypsin inhibitor(UTI)が癌細胞膜結合性 plasmin活性を抑制し、癌の浸潤転移を抑制することを報告してきた。今回癌細胞表面の UTI 結合蛋白(UTIBP)を精製同定し、UTIとUTIBPの結合様式について検討した。また培養線維芽細胞を用いてUTIの細胞内への取り込みについて検討した。【方法】(1) 抗UTI抗体は家兎ポリクローナル抗体(p-Ab)と、UTIのN末端を認識するマウスモノクローナル抗体(m-Ab)を作成した。(2)ヒト前骨髄性白血病細胞の細胞表面に結合したUTIを上記2種類の抗体を用いて蛍光染色を行った。さらにflowcytometryにてヒト絨毛癌細胞(SMT-cc1)とFITC-UTIの結合に対するm-Abによる競合を検討した。 (3)SMT-cc1の膜分画よりUTIBPをUTI affinity colum, preparative電気泳動、HPLCを用いて精製しそのN末端のアミノ酸配列を同定した。 (4)FITC-UTIのヒト培養線維芽細胞内への取り込みを共焦点レーザー顕微鏡で検討した。【結果】(1)癌細胞に結合したUTIはm-Abでは染色されず、p-Abでのみ染色された。また癌細胞とUTIの結合はm-Abにより濃度依存性に抑制された。(2)SMT-cc1の膜分画より精製したUTIBPのN末端はヒアルロン酸と結合するヒトLink Protein (LP)と極めて高いホモロジーが見られた。(3) 外因性に投与されたUTIは2時間後には線維芽細胞内に存在し、4℃では37℃に比してその量が極少量であることより、UTIは細胞内に能動的に取り込まれると考えられた。【結論】UTIはN末端を介してUTI 結合蛋白であるLPと結合する。これによりUTIはLPを介してHAと結合し、細胞膜表面に存在可能で、C末端のplasmin抑制作用により癌の浸潤を抑制すると考えられた。また、UTIの細胞内への取り込みが確認され、細胞内へ取り込まれたUTIはsignal transductionに関与して癌の浸潤を抑制している可能性がある。