ABSTRACT 1774(P7-3)
腎細胞癌における血管内皮増殖因子-C(VEGF-C)発現の定量的解析:土谷順彦1、三品睦輝1、赤尾利弥1、佐々木隆聖1、佐藤一成1、佐藤 滋1、小川 修1、戸井雅和、2加藤哲郎1(1秋田大・医・泌、2東京都立駒込・外)
Quantitative analysis of Vascular endothelial growth factor- C (VEGF-C) expression in human renal cell carcimomas.: Norihiko TSUCHIYA1, Mutsuki MISHINA1, Toshiya AKAO1, Ryuusei SASAKI1, Kazunari SATO1, Shigeru SATOH1, Osamu OGAWA1, Tetsuro KATO1, Masakazu TOI2 (1Dept. of Urology, Akita Univ. Sch. of Med., Dept. of Surgery, 2Tokyo Metropolitan Komagome Hosp.)
【目的】血管内皮増殖因子(VEGF)は腫瘍血管新生に深く関与していると考えられている血管増殖因子の一つであり、我々は腎細胞癌(以下、腎癌)におVEGF遺伝子の過剰発現を報告してきた。いっぽう、VEGF-Cは最近クローニングされた新たな血管増殖因子で、VEGFR-2(KDR/Flk-1)とVEGFR-3(Flt-4)の2つのレセプターを介してそれぞれ血管とリンパ管新生に関与しているといわれている。本研究では腎癌におけるVEGF-C mRNAの発現について検討した。
【方法】腎癌患者5例の手術標本から得られた腫瘍組織組織および正常腎組織からtotal RNAを抽出し、ランダムプライマーを用いてcDNAを作成した。既知の濃度のbata2-MG(内部標準)とVEGF-Cに対するheterologous DNA competitorを用いてcompetitive PCRを行い回帰曲線をもとめ、個々の検体におけるβ2-MGに 対するVEGF-C mRNAの発現を定量的に解析した。
【結果】beta2-MGとVEGF-Cを用いたcompetitive PCRにおいて相関性の高い回帰曲線を描くことが可能であった。腎癌患者5例全例で腎癌組織と正常腎組織においてVEGF-C mRNAの発現が認められたが、beta2-MGで補正した正常腎に対する腎癌組織での発現量の比は5例中4例では同レベル(0.50〜0.99)であり、1例では0.15と低下していた。
【考察】腎癌組織においてVEGF-C mRNAの過剰発現は認められず、VEGF-Cは腎癌の腫瘍血管新生にはあまり関与していないものと考えられた。現在症例数を増やすとともにリンパ管新生に関与するレセプター(VEGFR-3)についても検討中である。