ABSTRACT 1855(P7-8)
頭頸部扁平上皮癌細胞株におけるマトリックスメタロプロテアーゼ-2 (MMP-2) の活性化と膜型マトリックスメタロプロテアーゼ-1 (MT1-MMP) の発現:徳丸 裕1,藤井正人1,大野芳裕1,今西順久1,菅家 稔1,冨田俊樹1,亀山香織2,五十嵐直喜3,大谷吉秀3(慶大・医・1耳,2病理,3外)
Activation of MMP-2 and expression of MT1-MMP in human head and neck squamous cell carcinoma cells : Yutaka TOKUMARU1,Masato FUJII1,Yoshihiro OHNO1,Yorihisa IMANISHI1,Minoru KANKE1,Toshiki TOMITA1,Kaori KAMEYAMA2,Naoki IGARASHI3,Yoshihide OTANI3 (Depts. of 1Otolaryngol,2Pathol. and 3Surg.,Sch. Med.,Keio Univ.)
目的:頭頸部扁平上皮癌細胞株単独および線維芽細胞との共存培養におけるマトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP-2)の産生,活性化とその活性化因子である膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1(MT1-MMP)の発現を検討する。
方法:頭頸部扁平上皮癌細胞株 SAS, HO-1-u-1, SCC-25, HEp-2と線維芽細胞の共存培養を行った。培養上清中のMMP-2活性はゼラチンザイモグラフィーを用いて,また細胞株のMT1-MMPの発現はノーザンブロッティングを用いて検討した。
結果:SAS,線維芽細胞の培養上清に潜在型MMP-2を認め,SCC-25では潜在型,活性型ともに認めた。HO-1-u-1およびHEp-2では認められなかった。一方,癌細胞と線維芽細胞との共存培養ではSAS,HEp-2において新たに活性型の出現がみられ,SCC-25では活性型MMP-2のバンドが増強した。また線維芽細胞の培養上清を癌細胞に加えた場合にはMMP-2の活性化が認められたが,その逆では認められなかった。MT1-MMPの発現は,共存培養における活性化が認められたSAS,HEp-2において強く認められた。
結論:今回の検討より線維芽細胞によって産生される潜在型MMP-2が頭頸部扁平上皮癌細胞株により活性化され,その過程には癌細胞に発現するMT1-MMPが関与している可能性が示唆された。以上より頭頸部癌の浸潤において癌細胞と線維芽細胞の相互作用が重要な役割を果たしていると考えられた。