ABSTRACT 1860(P7-8)
抗凝固剤によるB16 melanoma 細胞の実験転移能増強作用:太田隆英, 前田雅代, 松井勇樹, 本城史郎, 谷野幹夫, 田中卓二, 小田島粛夫(金沢医大・1病理)
Enhancement of experimental metastasis by anticoaggulants in B16 melanoma cells: Takahide OTA, Masayo MAEDA, Takeshi MATSUI, Shiro HONJOH, Mikio TANINO, Takuji TANAKA, Shizuo ODASHIMA (Dept. Pathol., Kanazawa Med. Univ.)
目的: ワーファリン, ヘパリンなど抗凝固作用をもつ薬剤は転移を抑制する可能性をもつ。今回、B16メラノーマ細胞の実験転移能に対する抗凝固剤ワーファリンおよびラパコールの作用を検討した。結果: B16メラノーマ細胞をi.v.移植する6時間前にラパコール80mg/kg を1回強制経口投与することにより、肺転移結節数は著名に増加した。この増強はビタミンK投与により抑制された。ワーファリン0.3mg/kg強制経口投与は同様に肺転移結節数を著しく増強した。これらの結果から、抗凝固剤による転移増強がビタミンK依存性の過程の阻害によることが示唆された。その機構を明らかにするためにビタミンK依存性のプロトロンビン, プロテインC, プロテインSの活性を測定した。ワーファリン投与後のプロトロンビン活性は投与後12時間で一時的に低下し、プロテインC活性は投与後3〜24時間まで有意に低下していた。プロテインS活性には有意な変化は認められなかった。結論: 抗凝固剤投与後に生じる一過性の肺転移結節数の増加は、凝固抑制系のプロテインC活性が凝固促進系のプロトロンビン活性よりも一時的に強く抑制されることに起因する。血液凝固系の抑制は転移抑制の一方法であるが、凝固促進系・抑制系のバランスが転移形成には重要な意味をもつことが明かとなった。