ABSTRACT 1862(P7-8)
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口腔癌細胞由来IL-6による破骨細胞性骨吸収の増強ならびに骨吸収窩への癌細胞の遊走;口腔癌細胞の骨浸潤のメカニズム:岡本正人1,日浦賢治2,大江剛1,大庭泰夫2,寺井邦博2,合田永1,吉田秀夫1,佐藤光信11徳島大・歯・口外、2徳島大・歯・矯正 )

Enhancement of osteoclastic bone resorption and cancer cell migration in vitro mediated by endogenous IL-6; One of the mechanisms for bone invasion of oral cancer:Masato OKAMOTO1, Kennji HIURA2, Go OHE1, Yasuo OHBA2, Kunihiro TERAI2, Hisasi GODA1, Hideo TOSHIDA1, Mitsunobu SATO1 (1Second Dept. of Oral & Maxillofacial Surg., 2Dept. of Orthodontics, Tokushima Univ. Sch. Dent.)

破骨細胞性骨吸収がある種の癌細胞の骨浸潤、骨転移に重要な役割をはたしている事が知られている。今回我々は、口腔癌細胞が産生するinterleukin(IL)-6による破骨細胞性骨吸収の増強効果をin vitroの実験系を用いて検索し、口腔癌細胞の骨浸潤のメカニズムにつき検討した。骨浸潤性口腔扁平上皮癌細胞株BHYならびに非骨浸潤性口腔扁平上皮癌細胞株HNTを今回の実験に使用した。骨浸潤性BHYは非骨浸潤性HNTに比較して著しく多量のIL-6を分泌していた。牛大腿骨片およびウサギ四肢骨由来破骨細胞を用いたPit(骨吸収窩)-formation assayにおいて、破骨細胞培養液中にBHY培養上清を加える事により、あるいは破骨細胞とBHYを混合培養する事により、破骨細胞性骨吸収能は著明に増強し(p<0.001)、この活性は抗IL-6中和抗体により有意に抑制された(p<0.001)。骨片上でBHYのみ培養した場合(破骨細胞なし)はPitはほとんど形成されなかった。HNT培養上清あるいは破骨細胞とHNTとの混合培養によっては、通常の培地で破骨細胞のみを培養した時のコントロールと比較して有意差は認められなかった。また破骨細胞遊走試験において、BHY培養上清は有意に破骨細胞の遊走能を増強させ(p<0.05)、この作用も抗IL-6抗体により抑制された(p<0.001)。さらに興味深い事に、BHYと破骨細胞を混合培養した時の培養上清は口腔癌細胞の遊走能を著明に上昇させた(p<0.001)。混合培養中に抗IL-6抗体を加えた時の上清ではこの活性は有意に抑制されていた(p<0.05)が、混合培養上清回収後に抗IL-6抗体を添加し使用した場合は抑制効果はみられなかった。以上の所見から、口腔癌細胞の産生するIL-6は破骨細胞を局所に遊走そして活性化させ骨吸収を増強させるだけでなく、破骨細胞との相互作用で癌細胞を骨吸収窩に遊走させる因子の産生にも関与し、口腔癌の骨浸潤に重要な役割を担っている事が示唆された。